ロボットレストランには「マジで行かないで。やめて」
成田 でも最近では、ダサいもので埋め尽くされた東京の街が、外国人にとって逆にクールに見えてしまう不思議な逆転現象が起きてますよね。
椎名 そう。ロボットレストラン(新宿区歌舞伎町にあったロボットがショーをするレストラン。現在は閉店)とか。「マジで行かないで。やめて」って思って、そのことを考えると大声を上げながら走り出したくなるぐらいストレス。日本へいらしたら、とにかく福井の永平寺に行っていただきたい(笑)。間違えないでほしい。漠然と全インバウンドへ秋波を送る出任せなんて、我々がわざわざやるべきでない。そういうの、ありませんか? 正直。
成田 そこで突然の永平寺(笑)。ただ椎名さんは、「ダサくないのになぜか売れるJ-POP」を発明してしまったわけですよね。同時代の宇多田ヒカルさんとかとともに。商業性と芸術性・実験性を両立しつつ、おしゃれの壁の向こうに逃げ込みもしないというか。それはなぜできたんでしょうか?
椎名 恐縮です。初期の頃、それこそ『発育ステータス』をやった時も、「おしゃれなものと認識されてはいけない」って殊更意識してました。だから、デタラメなことを初期衝動だけでパッとやって、「もう忘れちゃった」っていうのが一貫したコンセプトだった。サウンド的にも。切実さだけを追求していました。
成田 売れるとは思わなかった?
椎名 当時私はまだ10代で、まわりの大人はみんな「俺はすっごくいいと思うんだよね。でも、ごめん、売れないとは思うんだ」みたいなことを言うんですよ。「俺は分かってるけど」って大勢の人に言われまくるわけです。ラジオ局や卸のみなさんへご挨拶申し上げてまわると。あんまり多くの人に言われるものだから「え、売れるんじゃね?」みたいな気持ちも正直ちらっと胸を掠めましたよ。
成田 みんながそう思ったら売れちゃいますからね(笑)。
椎名 だから、この「聞かれちゃいけない話」同様、「自分だけが分かってる感じがする」って魔力でしょ。絶妙なラフさがあったんだろうなと。要は「雑」。フォーマルでなかった。メジャーシーンではそういう天然の粗さは丁寧に整えて来られたはずだけど、ディレクターの山口一樹さんが1箇所も直さなかったんです。私も、歌入れで1回歌ったら「お疲れっす」とかいって帰っちゃうパンクスだった。その足でその辺のライブハウスをハシゴして、ありとあらゆるセッションを聴いて回る日常だった。だから、とにかくやることなすこと単に雑なんですよ。当時の自分の仕事の領域は。
※本記事の全文(約5500字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています(椎名林檎×成田悠輔「『俺はすっごくいいと思う。でも、ごめん、売れない』10代の椎名林檎が直面した“大人たちの評価”」)。全文では、以下の内容についても語られています。
・なぜ人は音楽に熱狂するのか
・私、MCで拍手いただきませんよ。バンバン曲つなげちゃうよ
・政治家は、走りはじめたら自分からは絶対に降りられない
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