10年ほど前からは現在の家で暮らし、スーパーの事務員のアルバイトをしていたという。

「穏やかでおっとりしていて怒っているところは見たことがありません。いい人という印象でした。学校の行事の準備にも積極的に参加していた記憶があります」(子どもを通じて付き合いがあったという女性)


 警察の調べに対し「高羽さんの女性や子育てに対する考え方が嫌だった。子育ての苦労をわからせたかった」という趣旨の供述をしていたが、その後、黙秘している。当初の供述の内容について、高羽さんはまったく心当たりがないという。警察は事件に至った背景や動機などについて慎重に捜査を続けている。また検察が現在鑑定留置を行って容疑者の刑事責任能力を調べている。

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逮捕までなぜ26年も要したのか

 容疑者の人となりや事件の背景に加え、私たちは「なぜ逮捕に26年もの歳月を要したのか」についても取材を進めてきた。高羽さんにとって身に覚えがないとはいえ、まったく接点がなかったわけでもない。5か月前には同窓会で再会し、直接会話もしていた。警察がこれまで捜査対象にした人は5000人以上にのぼっているが、その中に「高校の同級生」も含まれていたことが捜査関係者への取材でわかっている。実際、同級生たちからの聞き取りも事件後早い段階で行われていたが、安福容疑者が重要な人物として浮上することはなかった。

事件現場に残された血痕 ©NHK

 12月30日(火)午後10時15分からNHK総合で放送される「未解決事件」年末特別編では、過去の取材をひもとき、「網」を広げながらも容疑者に焦点を当てられなかった警察の捜査を検証する。

 そして、長年動かなかった「未解決事件」が、なぜ今、逮捕に至ったのか。

 取材から見えてきたのは、過去の捜査に疑いを持つこと、さらに、5000人以上の捜査対象の中からあえて一部にターゲットを絞り込んだ「特命捜査係」の判断だった。捜査指揮をとる刑事は、高羽さんに「我々が持っている名簿の中に絶対犯人がいる」と告げていた。

 過去にDNAを採取できていなかった「捜査未了」の数百人。その中に安福容疑者がいた――。

高羽さん家族の写真 ©NHK
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