台風が去ったあとの復旧が早かった理由

 交通の便の悪い二次離島で、どうしてこんなに復旧が早かったのか。それは、青ヶ島が「小さな島だから」だと思います。

 人口約160人の小さな島で、人が住む場所も1つの地区にまとまっているので、住居はもちろん、生活に必要なインフラもそこに集中しています。だから、復旧作業を効率的に進められるんです。

 もちろん、それだけが理由ではありません。復旧支援をしてくださる都の職員や電力会社の方々が、台風が来る前の日から島で待機してくれていたんです。だから、台風が去ったあとすぐに復旧作業をスタートできました。

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 そして、このスムーズな復旧作業ができたのは、村役場のおかげです。村内に何度も台風対策を呼びかけるだけでなく、事前に都や電力会社にかけあってくれたり、移動のためにヘリを手配してくれたりしたんです。

絶海の孤島・青ヶ島

青ヶ島は物資がない状況に慣れている

 あと、光ケーブルが一部破損して、インターネットが一時的に使えなくなりましたが、村役場では衛星通信システム「スターリンク」が使えたので、必要があれば役場に行ってインターネットに接続して、情報収集していました。

 他にも、一人暮らしのお年寄りを事前に避難所に誘導して、台風の間は役場の職員が付き添っていたとも聞いています。

 ただ、物資の供給は少し遅れました。物資を乗せる連絡船が八丈島から出ていて、その八丈島は、青ヶ島とは比較にならないほど今回の台風の被害を受けてしまったので、物流が滞っていたんですね。

 でも、青ヶ島はそもそも1〜2週間船が来ないのは当たり前の島だから、自然災害時に限らず、物資がない状況には慣れているというか。

 台風前に島内の畑で収穫した野菜をみんなで分け合ったり、家にあるもので工夫したりして、特に問題なく過ごしていました。

連絡船で物が運ばれてくる

副業が当たり前だから…青ヶ島ならではの強さ

 また、復旧に時間がかかっているものもあります。島にあるサウナ施設は、台風の影響で設備の一部が壊れてしまい、台風から2ヶ月以上経った今も運営を休止しています。

 そうなると、サウナ施設で働いている人は今どうしているのかが気になるところ。本土だったら、働いている施設が営業できなくなると、仕事を失って大変ですよね。

 でも、青ヶ島は副業が当たり前の島なんです。1つの仕事だけで生計を立てている人はほとんどいないから、1つ仕事を失っても、大打撃ではありません。これも、青ヶ島ならではの強さかもしれませんね。

 このように、島内外のたくさんの人が協力し合ったことで、過去最大級の台風でも大きな被害は出ませんでしたし、スムーズに日常生活に戻れました。ただ同時に「運」がよかったなとも思っています。