長考すると、迷って思考がまとまらなくなることも多い
羽生 たまたまABEMAのスタッフの方に「チェスの世界にはフィッシャールールというのがあるんです」と何気なく話したら、「それでやってみよう」となって。まさか本当に採用されるとは思っていませんでした(笑)。やってみたら非常に面白くて。持ち時間の制約がある分、逆転が頻発する。1分間に5、6回形勢が入れ替わることもあります。あのトーナメントに出ると、将棋ファンに知ってもらえるから、若い棋士たちはフィッシャーで一生懸命練習していますよ。
藤田 逆に「長考に好手なし」という言葉もありますが、長考すればいいというものでもないですか?
羽生 むしろ迷ってしまって、思考がまとまらなくなることも多い。苦しい局面では時間を使い過ぎて、結局良い手が見つからないまま、悪手を指してしまうケースもあります。
藤田 私は小学4年生の時に将棋の県大会で優勝したりしたんですが、そこからうまくならなかった。それは、性格的に長考が苦手だからだと思うんです。仕事をしていても、迷ったらもう決断しません。
羽生 少し間を置いて考えるということも?
藤田 自分の「軸」と照らし合わせてみて、迷った時点で正解じゃないな、と思っちゃうんですよね。ただ、仕事にはいくらでも逃げ場があるけど、将棋には逃げ場がないですよね。
羽生 苦しい局面で時間を使い切ってしまうと、心身ともに追い込まれます。名人戦の持ち時間は9時間ですが、他の対局は4時間が主流になってきて、深夜までかかることは減りました。それでも一局で相当のエネルギーを使いますね。
藤田 徹頭徹尾、一対一の戦いですから。棋士の皆さんが行き場のない絶望の顔を見せることがあって。以前、佐々木勇気さんが竜王戦で藤井さんに負けを悟った瞬間、魂が抜けたような表情になっていました。
羽生 長時間優勢でも、最後の1分でひっくり返ることもある。ただ、負ける時は自滅に近い、というか、そういう局面に追い込まれると言ったほうが正しいですね。当たり前ですが、将棋は互いが持つ20駒を最も良い位置に行けるように動かしていきます。すると、最後は動かす駒がなくなる。それ以降は、どちらがより厳しい局面に追い込まれていくか、の戦いなんです。
《対談の全文は「週刊文春 電子版」で公開中。麻雀と将棋の違いのほか、女性の登用について、将棋ファンにも馴染みの深いインターネットTV事業「ABEMA」の黒字転換など、他では読めない本音炸裂の“異業種対談”となっている》
