斎藤幸平氏が振り返る父の影響とは? 特集「僕の、わたしのオヤジとおふくろ」から、斎藤氏の記事「ご両親は共産党ですか」を一部紹介します。
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よく、こう聞かれる。「今どき、マルクスなんて、ご両親は共産党員ですか」、と。だが、ちょっと待ってほしい。マルクスと共産党をイコールでつなげないでくれ。別にマルクス主義者であっても、共産党に属していない人はたくさんいる。そしてなにより、親が共産党でないと、今どきマルクス主義者にはならないという想定が、馬鹿げている。むしろ、現在の惨状を見れば、これだけ格差を広げ、地球を破壊する資本主義に疑問をもつのが普通じゃないかと私は思う。
そういうわけで、マルクスと実家は何の関係もない。なんなら、私の思想形成は、親父から何の影響も受けていない。このエッセイを書くことになって、心に染みるストーリーで読者を唸らせようと必死に脳みそを絞ってみた。だが、正直なところ、ほとんど何も思いつかないのである。
私が小さい頃、現在83歳の父は、働き盛り、というか、毎晩飲み歩いていた。夕ご飯を一緒に食べた記憶もあまりない。むしろ、夕食後にTBS「うたばん」やキムタクのドラマを見ていると、あるいは、もう少し大きくなってから、中学受験の勉強をしていると、酔っ払った父親がタクシーで帰ってきて、やたら大きい声で陽気に話しかけてくるのを鬱陶しく思ったのを覚えている。父親は聖路加国際病院の人事部で働いていて、日野原重明先生をやたら尊敬して、その話ばかりしていた。でも、10代の若者に100歳近い爺さんの話なんてしたって、興味が湧くはずもないのだ。逆に、勉強を教わったり、休みの日にどこかに行ったとか、そういう思い出もほとんどない……。
中学に入って、今は衆議院議員の中村勇太(はやと)君と一緒にパンクロックを聴くようになり、バンドを始めた。そして、アメリカに憧れて、高校を卒業して、大学で奨学金をもらって留学した。大学でマルクスに出会い、ちょうど今年が私とマルクスの磁器婚式(20周年)である。一方、私と父親の関係は? 取り持ってくれるのは、子どもたちかもしれない。
※本記事の全文(約1700字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています(斎藤幸平「ご両親は共産党ですか」)。

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出典元
【文藝春秋 目次】前駐中国大使が渾身の緊急提言! 高市総理の対中戦略「3つの処方箋」/霞が関名鑑 高市首相を支える60人/僕の、わたしの オヤジとおふくろ
2026年1月号
2025年12月10日 発売
1550円(税込)
