『28年後... 白骨の神殿』

 最後の一本は、ウイルス感染により知性が奪われて凶暴化した人間「感染者」たちからのサバイバルを描いたシリーズの最新作だ。『28年後...』のラストから物語は始まる。

 アレックス・ガーランドの脚本は前作において、ゾンビ映画と思わせておいて、実際には少年の成長や人間の死や尊厳についてストレートに問いかけるシリアスなドラマを創出している。本作では、その要素をさらに深めている。

『28年後... 白骨の神殿』

 前作のラストで謎の金髪集団に救われたスパイク少年だったが、彼らは悪魔崇拝的なカルト集団だった。サバイバルしていた人間たちを襲っては、生贄として凄惨な手段で痛めつける。そして彼らは、前作でも重要な舞台となった、ケルソン医師が人間の遺体を材料に作り上げた「白骨の神殿」へとたどり着く。

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 悪魔崇拝のカルト集団と、無神論者の医師。どちらも「神」を否定した者でありながら、生き方は対極的だ。カルト集団は信仰の下に凶暴さを増していく一方、ケルソンは最も凶暴だった感染者を捕獲して知性を与えようとする。そんな両者の行動を通して、人間のあるべき姿が問いかけられていく。

 両者の違いを示す役割として上手く使われているのが、「名前」の扱いだ。カルト集団はスパイクを始め、全ての構成員にリーダーと同じ「ジミー」を名乗らせている。一方、ケルソンは名の無い感染者に「サムソン」という名を与えた。名前を授けることで、片や個人の意思や理性を奪い、片や人間としての尊厳と知性をもたらす。

「社会」が崩壊した世界で、人間はどうなっていくのか――。狂気と絶望の中にあっても、決して「人間」であることを諦めることなく、サムソンに向き合い続けるケルソンのひたむきな姿に心打たれる。これを演じるレイフ・ファインズが素晴らしい。狂気に満ちた外見の奥底で慈悲と知性を滲ませる演技を観ていると、なぜ彼がこの役を受けたのかがよく理解できた。

『28年後... 白骨の神殿』
監督:ニア・ダコスタ/製作:ダニー・ボイル/脚本:アレックス・ガーランド/出演:アルフィー・ウィリアムズ、ジャック・オコンネル、レイフ・ファインズ/2026年/アメリカ・イギリス/109分/配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント/1月16日(金)より全国公開

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