「世代を超えた運動」になりつつあるグロイパーズの戦い

 このように世代や経済格差といった上下の対立軸を強調することで左派と一部融合する傾向は、最近のフエンテスの方針転換によって一層鮮明になっている。フエンテスは自身の親イスラエル政策批判の立場が、ユダヤ人個人に対する差別や反ユダヤ主義ではないことを示すために、矛先をユダヤ人自身ではなく、ユダヤ人の富と結びついた既得権益層、寡頭政治に向ける方針にシフトした。このように語り直したことで、年長の白人男性で占められた少数の既得権益層に対して不満を持つ人々が全て、フエンテスに共感することが可能になった。

 この既得権益を持つ富裕層を敵視するという見立てにおいても、フエンテスの戦略は、結果的にサンダースやマムダニを支持する極左に接近している。グロイパーズとまで言えないライトなファンは、Z世代の白人男性を超えて、Z世代以外の白人男性や有色人種男性、そして若いリベラル女性を含む、様々な世代の女性にまで広がっているようだ。

カエルのミーム「Pepe the frog」が極右集団グロイパーズのシンボルに Tomasz Molina, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

 フエンテスのストリーミングの後半部分、リスナーによる質問コーナーを見ていると、アフリカ系、ラテン系、イスラム教徒など、フエンテスが白人至上主義の名の下に排斥しようとしている集団にも多くのファンやリスナーがいることがわかる。グロイパーズが好む言い方では、彼らの戦いはもはや「世代を超えた運動(generational run)」になりつつあるのだ。

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【著者プロフィール】
1973年ニューヨーク生まれ。専門は哲学・キリスト教思想。博士(学術)。関西学院大学神学部准教授。東京大学21世紀COE研究員、南山大学人文学部准教授を経て、現職。宗教などの文化的背景とマインドセットとの関係について、何かを神聖視する心理に注目しながら研究している。


[1] 2019年にラッパーのYe(カニエ・ウェスト)がトランプ大統領(当時は大統領ではなかった)の会食にフエンテスを同行した際には、トランプに対して激しい批判が生じた。

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