「アトラクションのような売場」に勝機を見出したワケ

 しかし、魚が売れないから人件費はかけられない、という考え方が間違いであることに、バローは気付いた。もっと言えば、人件費をかければ、そのコスト以上にリターンがある、ということに気付いた。

 そもそも肉とは異なり、魚の種類は多様であるが、一般消費者が食べ方を知っている魚は、極々限られた種類(鮪、鮭、鰤、鯛、鯖、鯵、鰯……あとどのくらいあるだろう?)しかない。魚には旬があるが、一般消費者は詳しくないし、さらに言えば旬の魚が切り身で置いてあっても、食べ方がわからないから買わない。

 魚とは、対面で説明販売して、加工してあげないと売れないのであり、切り身パックにして置きっぱにしておいて、そうそう売れるはずがないのである。また熟練の鮮魚店がほぼ死滅してしまった郊外部では一般消費者のハードルも下がっており、社員がある程度勉強すれば十分にその機能を果たせる。ここをバローはチャンスと捉えた。

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 さらに、対面販売には大きな副産物がある。アトラクションのような効果を発揮し、来店客数が劇的に増えるので、野菜や肉や総菜など、他の商品の売り上げベースが上がるのだ。その収益は、対面販売で生まれる人件費など容易に飲み込める規模である、というのがバローの出した答えだった。

鮮魚売場は大盛況を見せている(YouTubeチャンネル「バローチャンネル」より)

 とはいえ、10年ちょっと前までのバローはそんな考え方をしていなかった。

 バローといえば、誰よりもチェーンストア理論の具現者を目指していて、標準化、マニュアル化による効率化を基本とし、物流効率化を進めることで、生産性向上を継続的に推進し、ローコスト体制を構築してきた。そのインフラによって低価格を実現し、競合他社を撃破する、という戦略が成功して、岐阜の片田舎から出て中京を中心として15府県に広域展開する業界屈指の有力スーパーにのし上がった。

 しかし、2010年代辺りから事業拡大は続いているものの、その売場効率(売場面積当たりの売り上げ=店の人気度のバロメーターとなる指標)には陰りが見えていた。これはスーパーの優勝劣敗が進み、各地で生き残った有力なチェーンストア同士の競争になってくると、ただチェーンストアインフラを備えている(=生産性が高い)だけでは、同質化競争となり、消費者にアピールすべき差別化ポイントが必要となってきたことを現している。

 そんなとき、幸いにしてバローにはグループに差別化ポイントを持った仲間がいた。買収した名古屋の生鮮特化スーパー「タチヤ」である。