ところが蓋を開けてみると、「秋桜」が12位で「赤い絆」が11位。これを知ったプロデューサーのひとりは、「山口百恵が出ないとはどういうことだ! おまえは番組をつぶす気かッ」と烈火のごとく怒った。そして「ほかの歌手と順位を入れ替えたらどうだ」とまで迫った。

だが番組の企画者でディレクターだった山田修爾は、「いえ、それはできません」と突っぱねた(前掲『ザ・ベストテン』)。

結果的にそれは大正解だった。『ザ・ベストテン』の斬新さはたちまち視聴者を惹きつけた。最高視聴率は41.9%(世帯視聴率。関東地区、ビデオリサーチ調べ。以下同じ)。1年間の平均視聴率が30%を超えた年もあった。全604回の平均視聴率でも、23.9%と20%を超えた。

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新幹線のホームで歌った松田聖子

困るケースはほかにもあった。出演はOKだが、歌手のスケジュールの関係でスタジオに来られない場合である。

そこで生まれたのが、「追いかけます、お出かけならばどこまでも」のうたい文句で有名になった「追っかけ中継」だった。スタジオに来られないのなら、こちらから出かけていけばいいじゃないかというわけである。

コンサートがあるときは、終了後観客にも残ってもらってライブ形式で歌ってもらう。またドラマの撮影があるときには収録スタジオに押しかけて他の出演者の前で歌ってもらう。レコーディング中のスタジオで歌うこともよくあった。いずれも、見ている視聴者は得した気分になる。

しかし、これらはまだ序の口。もっとすごいのは、移動中の歌手に歌わせたことである。

1981年3月26日放送回、「チェリーブラッサム」で第5位に入った松田聖子は、新幹線で移動中。そこで静岡駅で途中下車し、駅のホームで歌った。もちろん衣装ではなく普段着だが、マイクを手に堂々たる歌いっぷりである。

だが歌の途中で発車時刻が迫り、追っかけアナがあわてて松田聖子を車内に誘導する。最後は車内の乗降口のところでの歌になったが、聖子スマイルを絶やさず歌いきる姿はプロ魂を感じさせた。