「Bが刑務所に入っていたのは知っていたんですか?」
「私ですか……。知っていました」
結婚する前に妻から弟が事件に関わっていたことを知らされていた。
「結婚を躊躇しなかったんですか?」
「それはなかったですね。それとこれとは別だなと考えて、これはもう自分に与えられた試練だなと思ったんで」
義兄が語る「試練」については20年前も聞いた言葉だ。
「こんな言い方したら変ですけど、薄気味悪い」
「Bと初めて会ったのはいつですか?」
「出所して、2日目ですね」
「第一印象はどうでしたか?」
「こんな言い方したら変ですけど、薄気味悪い。嫌な印象しかなかったですね」
「風貌とか表情とか、態度っていうのはどんな感じだったんですか?」
「もう“俺様”ですね……。自分がいちばんだぞみたいなそんな態度ですね……。元々ね、長身で、がたいのいい人間でしたから、そういうふうに見えたのかもしれませんね」
明かりを落とした暗い部屋で義兄にだけ照明が当たっている。義兄は言葉を選びながら、ときには考え込みながら、一言一言丁寧に答えていく。
「出所したあと、彼の様子や生活は?」
「出所したあとは、人生イチからですからローンもたくさん組めるし、自分のやりたいことはすべてできるんですね。それで高級車をローンで買ったりとか、まあとにかく目に余るぐらいの、ちょっとやりすぎじゃないかなっていう生活をし始めましたね」
「仕事はしていたのでしょうか?」
「仕事はですね、コンピューター会社に勤めたんですね。事件のときの弁護士の紹介で入社したのですが……。やっぱり事件のことが噂話になって、それで辞めて、それからはもうフラフラフラフラするようになって、それで仕事はしなかったですね……」
かつて同じ話は聞いていたものの、義兄にしか語れない言葉の数々が私の埋もれていた記憶を呼び起こし始めた。想定していた質問も、途中から意味をなさなくなる。インタビューそのものにドキュメンタリーの醍醐味が凝縮されたようだった。自分が理解していた景色が形を変えていくのを感じていた。
「彼は出所後に勤めていた会社を辞めてからはフラフラするようになって、仕事はしませんでした。母親に金を無心するようになりました」
義兄の話を聞きながら、24年前に加害者らを追った日々の記憶が鮮明に蘇ってきた。
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