聴き覚えのあるギターリフ。ロックンロールの名曲『キャロル』で映画は始まる。僕はローリング・ストーンズのカバーで知ったけど、元はチャック・ベリーの1958年の大ヒットだ。スクリーンに引き込まれていると、チャックのバックでギターを鳴らしているのはストーンズのギタリスト、キース・リチャーズじゃないか。ブルース・ギタリストの大物、ロバート・クレイもいる。

チャック・ベリー

“神様”も脱帽するロックの演奏の基本を固めた男

「ぶちかませ、キース!」

 チャックにあおられソロを取るキース。でも、さっきチャックが弾いたのとほとんど同じリフを繰り返している。まあ、それも仕方ないよな。あの“ギターの神様”エリック・クラプトンも本作でこう語っている。

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チャック・ベリー(左)とキース・リチャーズ

「ロックンロールやアップビートなナンバーをギターでやろうとすると、結局チャック風になる。他の選択肢ってものがほとんどない。ロックの演奏と言えばやはりチャック。彼がこの種の音楽の基本を固めたと言っていい」

エリック・クラプトン

 “神様”も脱帽するロックンロールの創始者、チャック・ベリー。その音楽人生が開花するのは1955年。チェス・レコードから出した『メイベリーン』がヒットし、白人専門のラジオ局で流された。アメリカの音楽史上画期的な出来事だったが、やがてラジオ局のDJたちはチャックが黒人であることに気付き、曲をかけるのをやめた。これに白人のティーンエージャーの少女たちが猛反発し、チャックの曲をラジオ局でかけるよう押し戻したという。

“必殺技”ダック・ウォークを発明

 チャック・ベリーのトレードマークと言えばダック・ウォーク。膝を曲げて腰をかがめ、片足を伸ばしてもう片足でアヒルのようにステージ上を跳ねて歩く。もちろんギターを弾きながら。その由来を自身で証言している。

「子どもの頃、よくテーブルの下に潜った。お客が来ると姉妹や親が言うんだ。“下に隠れて”と。家族の間のおふざけだった」

チャック・ベリーのダック・ウォーク

 幸せな家庭に育ったんだろうとうかがわせるエピソードだ。やがてミュージシャンとなり、「演奏中にやったら拍手喝采され、今も続けている」。

 ロックの“必殺技”として多くのロックミュージシャンにまねされ、ギター奏法の定番となった。中でもAC/DCのアンガス・ヤングのパフォーマンスが有名だ。足があまり曲がっていないしスタイルはかなり違うのだが、チャックへのアンガスのリスペクトがよくわかる。本連載で去年ご紹介したドキュメンタリー映画『ザ・フー キッズ・アー・オールライト』でも、ギターのピート・タウンゼントが華麗なるダック・ウォークを披露している。