毎年クリスマスにはあちこちで耳にする「ラスト・クリスマス」、そして大ヒット曲「ウェイク・ミー・アップ・ビフォー・ユー・ゴーゴー」、「ケアレス・ウィスパー」。郷愁を誘ってやまないワム!のジョージ・マイケルの真実に迫ったドキュメンタリーが公開中だ。
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世界中から愛され夢を叶えてくれる人物を夢想した
クリスマスイブ、友人の会社のエントランスでコンサートが開かれた。近くの音楽教室の先生たちが奏でたのは「ラスト・クリスマス」。この時期、世界中で流れる曲だ。イギリスのポップデュオ、ワム!が1984年12月に発表。クリスマスの切ない失恋を歌って大ヒット。日本でも松田聖子をはじめ多くのアーティストがカバーした。
曲を作ったワム!のジョージ・マイケルは2016年のまさにクリスマスに53歳で世を去る。それから9年、命日の翌12月26日にジョージの生涯を描く映画が日本で封切られた。大スターの栄光と闇に迫る作品だ。冒頭、彼が自己紹介するシーンから始まる。
「僕の名はゲオルギオス・キリアコス・パナイオトゥ。とても難しい発音だけど」
彼の父はギリシャ系キプロス人だ。
「世間一般には別の名前で知られてる。それは本名じゃない」
子どもの頃からスターになりたいと夢見ていたが、鏡に映る自分を見てとても無理だと感じた。そこで、世界中から愛され夢を叶えてくれそうな人物を夢想した。その名がジョージ・マイケルなのだ。実はこれが物語の伏線になっている。
ワム!が人気を得た理由とは
やがてジョージは親友のアンドリュー・リッジリーと1981年にワム!を結成。音楽面をジョージ、ステージ構成などをアンドリューが受け持った。仲良しのイケメン2人組は少女たちにモテモテだった。翌年、レコードデビューを果たして次々にヒット曲を飛ばし、スターダムを昇っていく。当時を知るキャスターや行動心理学者など3人の女性が、幅広い人気の理由を明かしている。
「2人のキュートでゴージャスでバブリーな男の子たち。ハッピーでポップだけど、それだけじゃなかった」
「もぎたての新鮮なミントのように健康的で、それでいてセクシー」
「ある記事で、彼らが社会的な良心を持っていることや、貧しい生まれであることが吐露されていたから、典型的なポップスターよりも魅力的に感じた」


