トンネルを進むと…
高速道路の非常駐車帯として作った退避スペースには、二度と点くことがないであろう警報表示板が設置されており、非常電話ボックスは何者かによって折り戸が開けられないよう逆向きに引っ張られている。
反対車線に至っては、電話ボックスそのものが撤去されて時速50km制限の標識が代わりに設置されている。設計速度時速80kmで造ったトンネルなのに……。ちなみに取材に当たり、何度もこのトンネルを走ったが、歩行者はゼロだった。
不思議な世界はトンネルを出た後も続く。
上の写真に写る道路の出っ張りは、もう1つの放棄された高速道路のインターチェンジと本線の跡だ。このような出っ張りを道路好きの世界では「イカの耳」と呼ぶが、これは日本最大と言っていい規模だ。本来はここに4車線の高架道路が、そのまままっすぐ造られる予定だったのだ。
実際、そのまま進むと道路はどんどんショボくなり、なぜか案内標識が道路からかなり外れたところに立っている。道路から見ると草が生い茂っていて、視認性も悪い。
これらの遺構は、トンネルを抜けた先に造る予定だったインターチェンジと、高速道路の本線建設の準備工事の跡だ。これが30年以上もの間放置されてきたのである。
そしてこれらは、たった1つの峠を越えるためだけに造られた。それが青崩峠である。かつて『ツーリングマップル』という地図に「あまりの崩落の激しさに日本のトンネル技術が敗退」とまで書かれていた、国土交通省(旧建設省)史上、最大の失敗とも言える土木工事が行われた場所である。
ここから、この不思議な工事の真相を解き明かしていこうと思う。
その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。



