「こんな山奥に、なぜ高速道路が?」——前編で紹介した、誰も使われることのなかった“消えた高速道路”。その舞台は、静岡と長野の県境にある、驚くほど人影のない山間部だ。交通量も需要も見えないこの場所に、なぜ国は巨額の予算を投じたのか?
人気YouTuberのもへじ氏による初の著書『ニッポンの土木 執念の難工事』(彩図社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/最初から読む)
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ナゾの道路の正体は…
冒頭で紹介した遺構は三遠南信自動車道という高速道路の一部だ。
静岡県の浜松と長野県の飯田を結び、東名・新東名と中央道を繋ぐ高速道路である。三遠南信という呼び名は、この道路が通る愛知県、静岡県、長野県の旧国名「三河、遠江、信濃」を合体させたものである。
この三遠南信地域は山ばかりで、日本有数の過疎地域だ。青崩峠周辺に至っては、50年ほど前まで車が通れず、何時間も山道を歩いて街に出ていたという、ありえないほどの田舎だった。
言葉は悪いが、「なぜそんな僻地に高速道路を造る必要がある?」と疑問が生まれる。
しかし、実はこの高速道路が通るルートは、はるか昔から本州を南北に縦断する幹線道路として機能していたのだ。このルートを「塩の道」と言う。
その起源は、なんと縄文時代にまで遡る。