雑草が生い茂り、車も人も通らない。完成目前まで造られたのに“一度も使われなかった”世にも奇妙な高速道路の正体とは? 人気YouTuberのもへじ氏による初の著書『ニッポンの土木 執念の難工事』(彩図社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む

(写真はすべて筆者提供)

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 まずは上の写真を見てほしい。2018(平成30)年に撮られたものだが、ここは普通の国道なのに、高速道路に使われる緑のキロポストが立っている。その先の道路は二股に分かれているが、上から高架道路が下りてくるよう、橋脚が建っている。

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 しかし2024(令和6)年に上空から撮った下の写真を見ると、橋脚が全て解体され、わずかに土台だけが残っている。さらに二股に分かれた道路は右側が封鎖され、一本道になっている。

 
 

 さらに奥に進むと、二股に分かれていた道路は合流するが、その間にも4車線の道路が合流するような跡がある。手前に切断した橋脚の土台が見えるとおり、先ほどの高架道路はこの部分に繋がる予定だった。

開通しないまま解体された高速道路

 つまりこれは、東名高速や中央道のような、片側2車線の立派な高速道路のインターチェンジの跡である。しかも、昔使われた高速道路ではない。1度も完成することなく本線が解体されたのである。高速道路の廃墟は数あれど、開通しないまま解体された高速道路はココだけだと思われる。

 不可解な点はインターチェンジ跡だけに留まらない。図3の奥にトンネルがあるが、その手前にも左側の道路だけに繋がるトンネルが建設されている。何も知らないと、それぞれ別の地域へ向かう道路なのか? と思いそうだが、行き先は全く同じで、山の向こう側では合流しているのだ。

 この時点でツッコミどころ満載だが、まだ序盤である。下の写真は、奥の方にあるトンネルの入口だ。その入口手前の路面を見ると、かすかにセンターラインの跡がある。

 

 センターラインは、現在の白線よりかなり右に寄っており、車道と歩道を分ける縁石は、後付けしたように見える。実際、歩道はあまり管理されていないようで、雑草が伸び放題となっている。

 

 さらにトンネルの手前には橋があり、池島第一橋と書かれた緑色の標識も立っている。つまり、この道路とトンネルは、もともとは高速道路で、暫定2車線で開通したのを中途半端な状態のまま普通の生活道路に改造したのである。

 高速道路が一般道に格下げされた例は新潟に1つだけあるが、完全立体交差のバイパスである。歩行者も通れるような生活道路にまで格下げされた高速道路は、ココだけだ。(※廃道になった後、一部が生活道路に活用された場所なら、山梨県の中央道・談合坂サービスエリアの近くにある)

 かつて高速道路だったこのトンネルも、かなり変わった特徴を持っている。S字カーブを描いているのに、他の区間と同じように設計速度時速80kmで建設されたのだ。もちろん現在の日本の高速道路に、時速80kmで走れるS字トンネルなど存在しない。

 ますます謎が深まるが、トンネルの中に入るとさらに不思議な世界が広がっている。