最新の宇宙工学を取り入れた火星都市の描写
AIやロボティクスなど未来のテクノロジーや火星都市をリアルに描くため、ペランはさまざまな分野の人々にリサーチを行った。
「まずはフランス天文学会のシルヴァン・ブーレーや、フランソワ・コスタールら世界的な専門家に相談し、赤道付近にあるノクティス・ラビリントス(夜の迷宮)にドームで覆われた都市を作ることにしました。谷間の壁から網の目のように洞窟が入り組んでいるこの地にドームを作れば、密閉しなくとも谷の壁で放射能を遮ってくれるのです。ドームを作る作業を考えロボットを登場させたり、ドームの壁から遠い中央部に富裕層が住む地区を配置するなど社会学的、歴史的な展開を考えながら各分野の専門家と街づくりをしていきました。他にもコンピュータプログラムの専門家、自動車の専門家たちにも協力をお願いしました」
ロボットやビークルから銃器などガジェット類、地球と火星を結ぶ連絡船、火星に広がる都市など、作り込まれたビジュアルも本作の魅力。個性的なデザインや色使いのポイントは空気感だった。
「デザインで重視したのは場所ごとの空気感を作ること。たとえば地球と火星は同じ街並みでもコントラストを変えています。地球はビルが上へ上へと重なっているのに対し、火星では横に広がっていくイメージです。色合いや雰囲気も、廃れゆくような地球に対して火星はアンチユートピア。つまり住人たちがユートピアにいると錯覚するような、どこか安っぽくてだまし絵的な“偽の楽園”の雰囲気を出そうとしたんです。美術監督のミカエル・ロベールはさらに時代の違いを加えてくれました。ロボットや車から家具など調度品までどれも同じパターンでデザインするのではなく、10年前、20年前にそれぞれの時代のデザイナーが作ったようなモデルの世代差も表現してくれました」
手書きの人間と3Dを融合
本作のアニメーションは手描きと3DCGが混在しているが、技法の使い分けにもテーマがある。
「人間性に対する他者性を表す要素として、3DCGを使うことにしたんです。つまり人間のキャラクターは手で描き、ロボットやビークルなどマシンはパソコンで動かしました。3DCGをセル風に仕上げるセルシェーディングも使っていて、これは人のタッチのイミテーションであるという意味でロボットに使いました。背景も手描きがベースですが、奥行き方向にカメラが移動するなど動きを伴うカットには3DCGを使っています」

