「正直、ショックでした」
そう振り返る富田さんの言葉には、悔しさよりも冷静さがにじむ。
「ただ、不思議なことに『ケアリーヴ』の売り上げ自体は、さほど落ちなかったんです。日常遣いの購入層が違っていたのかもしれません」ここでもニチバンは、走らなかった。見据えていたのは、どこまでもユーザーの姿だ。この“戦わなさ”こそが、ニチバンの社風だろう。
ハイドロコロイド素材を使った絆創膏「ケアリーヴ 治す力」が世に出たのは、それから実に8年後。「満を持して、でしたね」と富田さんは静かに続けた。
「最も難しかった点は、ハイドロコロイドの使い方でした。傷を早くきれいに治すという機能を担保しながら、フィットする、ムレない、はがれにくい。でも、はがすときは痛くない。この『ケアリーヴ』がずっと大事にしてきた長所をひとつも失わないこと。それを実現させました」
自然治癒力を活かした絆創膏の誕生
ポイントは、やはりパッドだった。
「特殊素材のパッドが、傷口から出る体液を吸収して、ふくらむ。『ケアリーヴ 治す力』では、ハイドロコロイドは、傷口が当たるパッドのみに使用しています」
競合商品は、違う。ハイドロコロイドが広い面積に施され、しかも全体が分厚い。対して「ケアリーヴ 治す力」は、傷口の部分だけ、そして驚くほど薄い。
「ハイドロコロイドが小さすぎる、薄すぎる、ニチバンはケチってるの? なんて言われたこともありましたね」
だが、それこそが価値だった。
「薄くても、傷を治してくれます。傷口以外の健康な肌には、通気性が良くフィットするテープを使うことで、ストレスをかけない。『ケアリーヴ』と見た目や使い心地がほとんど変わらず、傷を治すことができます」
薄くしても、きちんと“治す力”を発揮する絆創膏の誕生。その結果は、数字が物語る。
「ケアリーヴ 治す力」シリーズは2013年比で、売上規模は約7倍に成長。「ケアリーヴ」シリーズは2024年より国内売上数量トップを記録し、王者「バンドエイド」を抜く(*1)。今やドラッグストア店頭の絆創膏は「ケアリーヴ」が定番となり、韓国でも人気を博している。「毎日使うユーザーは、必ず自分のために、いいモノを選ぶ。やっぱり、そこが原点ですね」