しかも、今回は値下げ交渉禁止である。

「ですから、営業の発想を変えざるをえませんでした」

撮影=プレジデントオンライン編集部 「ケアリーヴ」シリーズを長年率いるニチバンの富田英樹さん - 撮影=プレジデントオンライン編集部

まず「使ってもらう」という選択

富田さんたち営業部員は考えた。この新商品は、説明すればするほど、かえって伝わらない。ならば、体験してもらうよりほかはない。そうだ、ドラッグストアや薬局の店員や薬剤師さんたちにサンプルを渡して、配ってもらおう――。

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まずは、従来品の営業をしながら、商談の最後にこう切り出した。「新商品ができまして。よかったら一度、使ってみてください」。商品をじかに触ってもらい、指に貼ってもらう。

「すると、次に営業に行ったときに言われたんです。『使ってみたけど、あの絆創膏いいね』と。すかさず、追加でサンプルを渡しました」。次第に複数の店から、「アレいいですね」と反応が出始めた。

当時、絆創膏の営業は派手な販促とは無縁だった。大型什器もなければ、イベント企画もない。やることはひたすら地道な店舗訪問である。

ドラッグストアに足を運ぶ。挨拶をする。売り場の棚をチェックする。少し整える。そして挨拶し、また訪れる。そんなルーティンに、毎度「ケアリーヴ」のサンプルを渡した。その結果、店員や薬剤師との会話は、想像以上に広がったという。

「自分で使っちゃいました。あかぎれひどいんで」
「朝、顔を洗うときまで、指に貼ってたこと忘れてました」
「お客さんに差し上げて、ものすごく喜ばれましたよ」

お客さんに持ち歩いてもらおう

やがて、商品そのものが店の棚に置かれ始める。テレビCMもイベント攻勢もなかったが、“動き”が見られる店が出る。理由を店員に聞くと、サンプルをお客さんに配ったという。

「サンプルの有効性は明らかでした。社内で調べると、サンプルを配布した店は、配布していない店に比べて売上数量が1.5〜2倍程度になることがわかりました。さっそくその数値を、各店のバイヤーさんたちにも伝えました」

数字は強い。実数の手応えが、人も店も動かしていく。業界の常識を覆した“高い絆創膏”が、少しずつ棚に並び始める。さらに富田さんたちは考えた。「じかに、お客さんたちにもサンプルを配ろう」。もらって嬉しいサンプルをつくろう、と。それが、“財布に入れられる”「ケアリーヴ」だった。カードサイズの持ち歩き用である。