文春オンライン

なぜ#MeToo運動はジャニーズ事務所やTOKIO山口達也には文句を言わないのか?――2018上半期BEST5

2018/08/15
note

ネットに溢れる声は「イケメン無罪」

 そもそも #MeToo 運動は米ハリウッドの映画産業で強い立場にあったワインスティーン氏の、ちょっと異常とも言える女性への迫害に声を上げられなかったということで勃発した社会運動のはずです。セクハラは良くないですよね。これはこれで大事なことだし、日本でもBuzzFeedが中心になってあれこれ頑張っていたので、何かするんじゃないかと思うじゃないですか。ジャニーズ事務所の大物タレントがやらかしたセクハラなんだから、#MeTooパネルどころか、でっかいうちわとか、火消しが振り回すまといみたいなのも動員して、ノボリ背負ってパレードでもやるのかと思って期待してみていたのに、記者会見も特になく、デモ行進するでもなく、ネットに溢れる声は「イケメン無罪」とか「憔悴している山口さん可哀想」などと話が違う。全面的にだ。そもそも、文科事務次官として天下り斡旋のかどで辞任した前川喜平さんは「出会い系バーで視察・見学」と称して素敵な店舗に出入りしてもそうお咎めない一方、同じくセクハラをやらかした財務省事務次官の福田淳一さんは容赦なくぶっ叩かれて、いまや財務省なんか解体して歳入庁でいいんじゃないかとまで言われる始末ですよ。

財務省・福田前次官セクハラ問題について謝罪する矢野官房長(左)ら ©時事通信社

 みんな、党派性が強すぎるんじゃないですか。立場を利用してセクハラして騒ぎを起こしたのがみんな組織の責任に帰するというのならば、山口敬之さんのいたTBSも文部科学省も財務省もジャニーズ事務所もみんな等しく #MeToo 運動に監督責任を問われて建物の前でデモを打たれたりピンポンダッシュに遭ったり黄色いペンキがぶちまけられるべきなんですよ。

なぜジャニーズ事務所は説明責任を果たせ、という話にならないのか

 本当に社会正義のために日本社会から男尊女卑的な風土を取り除き、女性にとって働きやすい環境づくりに貢献したいと考えるのであれば、なおのこと相手の組織ややらかした本人とは無関係にセクハラ事案には立ち向かうべきじゃないでしょうか。

ADVERTISEMENT

福田前次官セクハラ問題について会見する、テレビ朝日・角南社長 ©時事通信社 

 わたし個人としては、本当にセクハラをやった本人だけでなく、組織も責任をしっかりとるべきなのだ、という発想で行くのはそう反対ではありません。襟は正すべきだし、責任はしっかりとるべきだと感じます。だから、財務次官の福田淳一さんが本当に問題だとするならば、財務省は解体するべし、財務大臣の麻生太郎さんも辞任しろと主張するのは構わないと思うんですよ。

 でもなぜ、山口達也氏が出てきたとき、ジャニーズ事務所は説明責任を果たせ、ジャニー社長も管理不行き届きだから釈明のひとつもしろ、という話にならないのか、不思議で不思議でなりません。 #MeToo 問題に積極的な英BBCももっと攻めるべきだし、おかしいなあと思いました。

なぜ#MeToo運動はジャニーズ事務所やTOKIO山口達也には文句を言わないのか?――2018上半期BEST5

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー