予算が確保できても…
そして、中国のミサイルを駆使した「接近阻止・領域拒否(A2/AD)」戦略に対抗するために作られた構想が、多数の小型艦艇や無人艦艇がネットワークでつながり、一体化して攻撃する「DMO(分散海上作戦)」だった。
ところが、その中核として20隻建造するはずだったコンステレーション級フリゲートも昨年11月、コスト増や建造の遅れから2隻だけでの打ち切りが発表された。
また、米国防総省は2023年8月、無人兵器を1年半から2年以内に大量配備する「レプリケーター構想」を発表。米インド太平洋軍のパパロ司令官は2024年6月、米紙ワシントン・ポストのインタビューで「多数の機密装備を用いて台湾海峡を無人の地獄絵図にしたい」と語った。
しかし、その構想も第2次トランプ政権の誕生で頓挫した。黄金艦隊には数十隻の支援・輸送艦が含まれるというが、どこまでDMOを実践できるのかわからない。むしろ、トランプ級戦艦の建造コストが、無人艦や無人潜水艦の建造予算を削り取ってしまうかもしれない。また、予算が確保できても、没落した米国の建造能力で補いきれるのかどうかもわからない。
ところで、米メリーランド州アナポリスにある米海軍士官学校にある博物館には、山本五十六連合艦隊司令長官のコーナーが設けられている。自衛隊元幹部によれば、1941年12月の真珠湾攻撃当時、米国での空母の位置づけは艦隊の護衛といった程度だった。
そうしたなか、多数の空母を集め、真珠湾攻撃を実現した山本の戦術を見て、米国人は「そんなやり方もあるのか」と度肝を抜かれた。米国はその後、空母を中心にした航空戦術を重視し、戦後は空母1隻にイージス艦5隻程度、原子力潜水艦1~2隻で構成する空母打撃群を中心とした作戦構想を確立した。博物館に設けられたコーナーは時代の先駆者だった山本五十六への敬意の象徴でもある。
一方、46センチ砲という大艦巨砲時代の究極形態として登場した戦艦大和だったが、就役したのは1941年12月だった。結局、大和型戦艦は大和と武蔵が建造されただけで、3番艦は大型空母「信濃」に改装された。太平洋戦争で大きな見せ場もなく、大和は1945年4月、沖縄での戦闘に向かう途中、九州坊ノ岬沖で米軍の攻撃により、生涯を終えた。
トランプ級戦艦の登場は2030年代と言われている。世界と米国の歴史と現状を無視した構想の行方とは……。未来は極めて暗い。