トランプ米大統領は昨年12月、「トランプ級」大型戦艦などを建造する「ゴールデンフリート(黄金艦隊)」構想を発表した。米海軍によれば、新型艦は全長260メートル前後、排水量3万トン以上で、全長263メートルの戦艦大和に匹敵する大きさを誇り、最終的に20~25隻が就役予定だという。
「これまで建造されたどの戦艦よりも速く、大きく、圧倒的で、100倍強力なものになる」(トランプ米大統領)
しかし、世界の軍事専門家でこの言葉を信じている人はほとんどいないだろう。世界と米国の歴史と現状を無視した構想だからだ。
宇宙船のような “戦艦”
まず、現在のアメリカにとって脅威である中国との高強度の戦闘空間において、戦艦が活躍できる場所はないのだ。
2015年頃までは、米国は空母打撃群などの強力な海空軍力を押し出して中国に勝利する「エアシーバトル構想(*1)」を保持していた。
*1 米軍が想定する中国軍の作戦「接近阻止・領域拒否(A2/AD)」戦略に対抗するため構想した戦略。敵の先制攻撃による被害の極限化、敵の指揮統制・情報活動の盲目化、敵の長距離打撃兵器システムの制圧が主な狙い
しかし、「接近阻止・領域拒否(A2/AD)」の中核をなす、2000発以上とされる短中距離ミサイルの格好の餌食になることがわかり、防衛戦略の変更を余儀なくされた。艦隊では太刀打ちしようがないわけだ。
ところで、昨年7月、「エアシーバトル構想」時代の「遺物」が横須賀港にやってきた。ズムウォルト級ミサイル駆逐艦(*2)の2番艦「マイケル・モンスーア」である。
*2 高度なステルス性、強力な対地射撃能力が特徴のミサイル駆逐艦モデル
ステルス性を追求した突起物の極めて少ない船体は宇宙船のようだと評される。
イラク戦争で仲間を助けるために戦死した米軍兵士の名前をつけた同艦は2019年に就役した。排水量は1万6000トン。全長610フィート(約186メートル)、幅87フィート(約27メートル)で、30ノット(時速約56キロ)以上の速度で航行できる。
「マイケル・モンスーア」を視察した知人たちは、操艦方法に驚かされたという。舵輪(ラダー)はなく、出力や方向について表示されたコンソールのディスプレイをマウスでクリックして操艦するのだ。
また、知人たちは「マイケル・モンスーア」が搭載する155ミリ砲について、「現在は発射システムにつなげていない」という説明を受けた。いずれ取り外されるという意味のようだった。
