親たちがタワマン内のパーティールームや居酒屋で酒を酌み交わす間、子供たちを屋外で遊ばせる行為を「放牧」と呼ぶ親がいる。

 中学受験専門塾の代表を務める矢野耕平氏が『ネオ・ネグレクト  外注される子どもたち』(祥伝社新書)で明かすのは、高所得層エリアで起きている「放置子」の実態だ。なぜ彼らは、100万円もの“保活費”をかけてまで守った子供を夜の街に放り出すのか。背景に潜む“事情”に迫る。

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居酒屋やファミレスでお酒を飲む母親たち

 駅を出て、しばらく歩いたところに一軒のドラッグストアがある。夜遅い21時くらいにこの店の中で「たむろ」している小学生がよく見られるという。

 その光景を目撃した母親は語る。

「小学生の集団が店内でうろうろしている。女の子たちは数人固まって化粧品コーナーに置かれている試供品を使って『お化粧ごっこ』に興じているのです。その中にわたしの知り合いのお嬢さんがいたので、『あれ、ママはどうしたの?』と声をかけたのですよね。そしたら、『近くのお店にいる』と。なるほど、ドラッグストアのすぐそばには居酒屋があるのですね。そこで、ドラッグストアにたむろしている小学生たちの親が集まって飲んでいるのですよ。ネオ・ネグレクトの意味を伺ってこの話が思い浮かんだのですが……」

 この母親は一瞬ことばを詰まらせたあと、わたしにこう告げた。

「そう考えると、わたしもネオ・ネグレクトに手を染めてしまっているのかもしれない……」

 母親が語るにはこういうことだ。

 この母親もそうだが、タワマンで仲の良いファミリー層は一様に共働きだという。そしてわが子が幼児のころからの付き合いだ。その母親たちが週末に近隣のファミレスに集まって、夕方から食事を兼ねて2時間程度お酒を飲むという。

写真はイメージ ©AFLO

 そのとき子どもたちはどうしているのか。

 夕飯を終えてじっとしていられないためファミレスに隣接している公園で走り回っているというのだ。

 それにしても、夜の公園である。不審者がいないとも限らない。この点について尋ねてみると、この母親はこう返答した。

「大丈夫ですよ。マンションに囲まれた地元の小さな公園で、外部から人は入ってきませんし、ファミレスの窓から子どもたちが遊んでいる様子がちらちらと目に入るので、『ああ、あそこで遊んでいるな』と確認ができますし」

「ただ」とこの母親は声のトーンをすこし落とした。