この母親が言わんとしていることはよく理解できる。仕事をしながらも、子育てもいつの間にか押し付けられている身としては、同じような境遇の母親たちで集まって、お酒を飲みながらわいわいと語り合うことそれ自体が明日への活力を生み出してくれるのではないか……そんなふうに考えているのだろう。この母親の弁は、夫、というより男性社会の在り方に対して疑義を呈していると言い換えることができるかもしれない。
この話を黙って聞いていた別の母親はことばを継ぐ。
「子どもが保育園に通っていたころは、まだそれでも父親と育児の分業ができていました。たとえば、保育園に送っていくのは父親、迎えに行くのは母親、なんて。でも、子どもが小学生にもなると、父親の育児熱が冷めてしまうのです。ひょっとしたら、もう成長したから大丈夫だなんて安心してしまうのかもしれませんね」
タワマン世帯の「保活」の実態
このタワマンエリアのファミリー世帯は、先述したようにその大半が両親共働きである。そうなると、わが子を保育園に預けるのが一般的だという。
この地域の保育園は多忙な親のニーズにこたえている。朝は7時から夜は22時くらいまで子どもを預かってくれるところもあるらしい。
ある二人の母親は、かわるがわる保育園にまつわる話をしてくれた。
「近隣にお住まいの女医さんなんて本当に大変です。早朝から夜遅くまで子どもを預けて、仕事をしています」
「最近はこのエリアでは保育園がたくさんできて、いまはどの家庭も利用できますが、わたしたちのころは保育園自体が少なくて、待機児童問題が勃発していました。月額4万~5万円程度で子どもを預けられる認可保育園に入れるのが本当に難しかったのです」
一人の母親がわたしに問うてきた。
「認可保育園に子どもを入れるまでにわたしたちがお金をいくらかけたか、想像がつきますか?」
わたしは目が点になった。なぜなら、認可保育園は認可外保育園と比較すると出費は抑えられるのではないかと思ったからだ。
考え込んでしまったわたしを見て、その母親は微笑んだ。
「意味がさっぱりわからない話ですよね。だいたい100万円です」
わたしは驚いた。100万円の内訳はこうだ。
ベビーシッターの会社との契約金、そして、ベビーシッターの雇用費用。それから認可外保育園に通園する費用。なお、認可外保育園は月額20万円くらいかかるという。
保育園(に入園するための)活動、いわゆる「保活」の際に「いかにわが家が困っているのか」というアピールをしなければ、認可保育園には入れない。ポイント制になっていて、そのポイントが高い家庭から優先的に認可保育園への入園が認められるらしい。つまり、100万円はそのポイント獲得費用とも言い換えることができる。