トランプ氏を突き動かす「不信の論理」
同氏はかつて不動産王と称される実業家だった。不動産はレンタルやリースの場合、契約が破られる可能性もあり、確実に信じられるものではない。所有して初めて自分のものになったと確信できる。同氏がグリーンランドを領有したがっているのは、同氏の中に不確実なものに対する「不信の論理」があるからだろう。それは、同氏が数多くの国際機関から脱退していることからも明らかだ。
国際機関に入っていても、米国がそこから確実に恩恵を得られるとは限らないし、得られたとしても米国がフェアーに得られるとは限らない。そんな不信感から、自身が議長を務めて世界各地の紛争に関与することを示唆している国際機関「平和評議会」を新設したものと思われる。
トランプ氏は「不信の論理」を中国やロシアに限らず、同盟国に対しても働かせている。グリーンランドを領有したいのは、現在、同地の安全保障を担っている欧州8カ国の軍事力を信頼していないからだろう。
トランプ氏にとって信じられるのは自分だけなのかもしれない。経済格差が広がる中、不信感を募らせている若者たちも、トランプ氏と同じ思いを共有しているのではないか。
「原爆投下は正しいか」論争との類似性
軍事行動に歯止めをかけられるものについて、トランプ氏は「一つだけある。私自身の道徳観だ。私を止められるのはそれだけだ」と述べたが、その発言にも自身への過信が表れているように思える。国際法のような法律には縛られない、自分の道徳観が法律になるのだと言わんばかりの発言だ。
道徳的な正しさについては、第一次トランプ政権下、国家安全保障問題担当の大統領補佐官を務めたジョン・ボルトン氏も言及していた。同氏は「広島に原爆を投下したことは、道徳的に正しかった」と述べていた。
米国では、近年、原爆投下を正当化しないという声が高まってはいるものの、それでも、ピュー・リサーチ・センターの昨年の世論調査では「正当だった」が35%と「正当ではなかった」の31%を上回っており、正当化する声の方がまだ強い。トランプ氏を支持する保守層を中心に、「道徳を守るための力は正当化される」という考え方が根強く支持されていると言えるのではないか。
Xでは“力による平和”を求める声が続出
力というと、トランプ氏は米国の圧倒的な軍事力を背景に“力による平和”を訴えてきたが、Xでもそれを賞賛する声があがっている。
「平和は謝罪から生まれるのではない。平和は力から生まれる。大統領はおそらく米国史上最も強い指導者だ」
「力による平和。トランプ大統領は強力な国防こそ安定への道だと位置づけている」
「“力による平和”に投票だ」
「驚くべきリーダーシップを見せてくれた。力によって平和への道を切り開いている」
