それも父は「そうじゃないんだね」と答えました。父は車椅子を前後に動かしました。この動作は父が何かを考えている時、よくする動きです。
最後に(一番可能性があると考えていたことですが)、
「病気を恥じて、統合失調症だと診断を受け止めることができず、連れて帰ってきたのではないですか?」
と聞きました。私の質問を聞いている間、父は車椅子を足で前後に動かし続けます。
「それはママなんだ。パパにはそういうことを考えたことはなかった。ママは統合失調症だと言われることを極端に嫌ったんだよ」
と父は答えました。それで私は父に聞きました。
「パパはお姉ちゃんが統合失調症だと思ったことはなかったの?」
「ママの判断が激しくて、パパはその判断に従っていたんだ」
父は車椅子をゆっくりと前に動かし、10秒くらい考えて答えました。
「思ったことはあったね」
私は改めて父に聞きました。
「それならお姉ちゃんを精神科に受診させようと、本人が嫌がるなら説得しようという気にはならなかったの?」
父は答えました。
「ママの判断が激しくて、パパはその判断に従っていたんだ」
私は食い下がりました。
「ママを優先するあまり、お姉ちゃんの治療が何十年も遅れたのはしかたがなかったと言っているように聞こえるけど?」
父は、
「そういうような形になっていたね。確かにね。だけどママが判断しているんだからパパとしてはそれでいいというように過ごしていたよ」
と答えました。
これ以上聞いても同じ返事だと思ったので、私は質問を変えました。
「お姉ちゃんの一生は終わってしまったけど、もし(やり直す)機会があるなら、どうすればよかったと思います?」
