医学部に通うほど優秀だった姉に、統合失調症の症状が現れて突然叫びだした。医師で研究者の両親は、そんな姉を「問題ない」と医療から遠ざけ、南京錠をかけて家に閉じ込めた――。
藤野知明監督による映画『どうすればよかったか?』は、20年にわたり自身の家族にカメラを向け続けた作品だ。2024年12月に公開されるとすぐに口コミで大きな話題を呼び、動員数は16万人を突破。ドキュメンタリー映画として異例のヒットを記録した。
ここでは、映画に入れるのを断念したショッキングな事実も含め、藤野監督自身が率直に綴った著書『どうすればよかったか?』より一部を抜粋。
「お姉ちゃんを精神科に受診させようという気にはならなかったの?」監督が自身の父と対話する印象的なシーンは、どのようにして撮られたのか。映画終盤のシーンの裏側について綴った部分を紹介する。(全4回の4回目/最初から読む)
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どう終わらせるか?
当初の構成では、姉が精神科病院を退院して、外出も自由になり、以前より静かな時間を過ごす生活を始めるところで終わる予定でした。姉ががんで亡くなったことは蛇足だと考えていました。しかし、姉の葬儀の場面の父の行動も含めるべきと考えるようになりました。あの場面で父の考えが露わになったと思ったからです。
その場面だけを追加すると父の印象が悪くなってしまうので、さらに父が毎朝顔を洗った後、仏壇で母と姉の位牌に手を合わせていた様子を追加撮影し、編集に加えました。それでもまだ終わった感じがしませんでした。それはなぜかと考えると、どうして姉の精神科受診を拒んだのか、両親にまだきちんと聞けていないと感じていたからです。
既に亡くなってしまった母には聞けませんが、父にはまだ話を聞けるので、最後にもう一度、父にインタビューをしようと考えました。それまでに編集した映像を父にも観てもらいました。
インタビューは編集の締切の4日前、23年の5月に父が普段寝起きしているリビングで行いました。ベッドの横の壁には母と姉の遺影が並んでいます。家族4人が揃いました。
私は父に、姉の受診を拒んだ理由を3つ挙げて質問をしました。
最初に、「姉を病院から遠ざけたのは病院の治療に期待が持てなかったからですか?」と聞きました。
父は「違う」と答えました。
次に私は「では病院は治療するところだけど、虐待も行われる可能性もあるから受診させなかったのですか?」と聞きました。
