このように、恋人がいながら他の男の失恋の相談にのったり、ホテルに行ったりと、非常に尻軽に見える文菜だが、実はその根底には恐れや不安、自信のなさがあることが見えてくる。

 背景として語られるのが、文菜のコンプレックスだ。古着屋で一緒に働くアロマンティック・アセクシュアル(他者に恋愛感情を抱かず、性欲を持たない)の友人に対し、「羨ましい」という感情を抱いている。

アロマンティック・アセクシュアルの友人に向ける真剣な表情は、男性たちに向けるものとは全く違う 番組公式インスタグラムより

 性的なことがあろうとなかろうと、すぐ人を好きになってしまう自分とは違い、関係性が変質しない在り方への憧れと、まっすぐな性格への憧れがあるのだと。

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 さらに、文菜にとって関係性は大きく2つに分かれているとモノローグで語られる。「性的なことが絡むか、絡まないか」「大切な話ができるか、できないか」。

 そしてコンプレックスが提示されることで、文菜の印象は1話と2話では大きく変わる。不気味さは消えないが、その質が変わる。

 1対1の会話が多く登場する中で、文菜が相手によって声色や間、話すスピード、態度を微妙におそらく無意識で変えていることが否応なく浮かび上がってくるからだ。

一見すると常に余裕、しかし実は全く主導権がない

 過去の恋愛で失う痛みを経験した文菜は、そうやって関係性をコントロールする立場に自分を置き、「本当には好きにならない人を相手に選ぶ」クセがついている。そうすることで、傷つかないように身を守ってきた。

小説家の先輩と一緒にいるときは少し生意気風に 番組公式インスタグラムより

 そのため、一見すると文菜自身は常に余裕で、男性のほうが彼女のことを好きな関係性に見える。しかし一方で相手が喜ぶ表情や言葉を無意識に選び続ける文菜には全く主導権がないようにも見えるのだ。

 恋人には距離の近さと淡白さが同居するミステリアスな顔を見せ、小説家の先輩には甘えと乱暴さを織り交ぜ、バイト先の先輩にはぶっきらぼうに向き合う。彼らはいずれも「性的なことが絡む、あるいは絡んでもいい」関係でありながら、「本当に大切なことは話せない」相手なのだろう。