ついに見つかった「決定的証拠」

 死亡時刻変更の根拠は検察側が依頼した法医学者の鑑定結果によるものとされ、それが正しいかどうか大いに疑問だったが、いずれにしろ午前4時のアリバイを立証しない限り、ロバトの無罪は証明できない。彼女の弁護人は死亡時刻の再検証に注力し、2009年、有力な情報を得る。

 きっかけは、冤罪事件を専門に扱う雑誌『ジャスティス・ディナイド』の発行人が、事件発生時に撮影された被害者ベイリーの遺体の写真を入手したことだった。発行人は何かしらの手がかりを得るべく、カナダ・ブリティッシュコロンビア州バーナビーにあるサイモンフレーザー大学の犯罪学教授で昆虫学の権威でもあるゲイル・アンダーソンに写真を見せ協力を仰ぐ。

 すると、彼女は即座に写真に違和感を覚える。もし検察の主張どおり7月8日午前4時が死亡時刻なら、発見された同日22時15分には遺体にハエがたかっているはずなのに、どの写真にもその痕跡が映っていなかったのだ。

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写真はイメージ ©getty

 通常、ハエは殺害遺体を確認すれば、ほんの数分でそこに群がり、傷口や口、鼻などに産卵し、その痕跡を明確に残す。それが無いのはなぜか。

 調べるうち、アンダーソン教授は大きな矛盾に気づく。事件が発覚した7月はハエが最も積極的に活動する時期。ただし、その活動時間は日がのぼって気温が上昇してからだ。逆に言えば、気温が下がるとハエは動かない。これが意味するところは、ただ一つ。ベイリーが殺害されたのは日がのぼる直前で気温が上昇しつつある午前4時ごろではなく、日没後から22時ごろまでの間である可能性が高いという事実だ。