「あの怪我、転んだって思ってるだろうけど…」

 沈黙が破られたのは、事件から3年が経過した2025年6月11日。高校3年生になったダイキさんの進路に関する三者面談の場だった。面談が終わりかけたその時、ダイキさんは母親に全てを告白する決意をした。

「三者面談の時、これが『ラストチャンス』だと思いました。このまま卒業してしまえば二度と話す機会はなくなる。もうすぐ夏休みが始まり、学校に行くこともなくなるタイミングだったので、今なら安全に逃げ切れるかもしれないという思いもありました」

 進路の話が一通り終わった後、ダイキさんは「ちょっと待ってくれ。話があるんだ」と声を震わせながら切り出した。

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「お母さんは、あの怪我、転んだって思ってるだろうけど……本当は隣のクラスのAにやられたんだ!」

 それを聞いた母親は、椅子から転げ落ちるほどの衝撃を受けた。3年前に起きた出来事が不慮の事故ではなく、極めて悪質な「傷害事件」であったことを初めて知ったのである。

「びっくりして、言葉が出ませんでした。『どうしてこれまで黙っていたの?』と聞くのが精一杯でした。ダイキは涙ながらに 『仕返しが怖かった。もし話したらまた襲われるかもしれないし、同級生のみんなも事件を見ていたけど、みんなに迷惑をかけるのも嫌だった』と話してくれました」

 この告白は三者面談を担当した担任教師もその場で淡々と聞いていたという。

 ダイキさんは3年越しに事件の真相を話したことで、「高校の担任が学校に伝えて正式な調査をしてくれて、警察へも届けてくれるはず」と期待していた。しかし、その期待もまた、無情に崩れ去ることになる。

 現在のダイキさんは、当時の絶望をこう振り返る。

「被害を告白した後の7月に学校側は『守ります』と言いましたが、実際には具体的な調査も加害者への処分も行われませんでした。両親が何度電話をしても『警察が捜査中なので無理です』の一点張りで、結局、学校自らが動いてくれることはありませんでした。学校に対する信頼感は、完全に失われました」

次の記事に続く 「同級生をカッターナイフで切りつけた生徒に卒業証書を渡すのか?」一生消えない傷跡が残ってしまった中3男子が“2カ月後の卒業式”に望むこと