「本業はネット広告ですよね。メディア事業など止めて、本業に専念すべき」――。かつて藤田晋氏が村上世彰氏から突きつけられたこの要求は、投資家としての「冷徹な正論」だった。

 しかし、現場で戦う経営者の視界は、数字だけでは割り切れない。なぜフジテレビは不動産で稼ぎ、サイバーエージェントは赤字を掘ってまで新規事業を積み上げるのか? 10万部突破のベストセラー『勝負眼 「押し引き」を見極める思考と技術』(文藝春秋)よりお届けする。(全2回の2回目/最初から読む

フジテレビが「不動産で儲ける」ことは正しい戦略? ©getty

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投資家が「企業の多角化」を阻止する理由

 歴史的に見れば、あそこで縮小していれば今のサイバーエージェントは無かった訳で、弊社に関しては村上さんの主張は間違っていたことになる。でも、当時の村上さんも独立したばかりで、試行錯誤もあったろうし、まだ実績も乏しい中、出資者からの大事な資金を投じていたから引けなかったと思う。それに、悪いことばかりではなかった。

 村上さんとのやりとりを通じて上場企業の社長としては成長につながった。資金の用途を厳しく問われたことで、その後、余剰資金に対してはいつも緊張感がある。また、事業に関しては、投資家と我々経営者の間に「埋まらない溝」が存在することも学んだ。そして、その溝は上場してる以上、ずっと付き合わなければならないものだった。

 投資家視点からは、ポートフォリオを組んで色んな会社に投資する。eコマースならA社、ネット広告ならB社、メディアならC社というように。

 ネット広告だと思って投資している会社が新たにメディアを立ち上げるなんて頼んでない。ましてや、その新規事業のために赤字を出して本業の利益を圧迫するなんて止めてほしい。個別企業に多角化など要らない。こっちで別のところに投資するから。