「女性は家庭で育児に専念せよ」という思想

 不妊治療医のクラインはキリスト教福音派の中の「クイヴァーフル」(Quiverfull)と呼ばれる一派に属し、教会のリーダーでもあった。クイヴァーフルは「可能な限り多くの子を持て。そのために避妊は行わない」としている。また、伝統的な家族像をよしとし、女性は家庭で妻、母親としての役目を果たし、夫の「助け手」となるよう求められる。

 #1で取り上げた、IT業界人の出生促進主義者たち、通称「テクノ・ピューリタン」はクイヴァーフルについては語っていないが、彼らの中の強硬派はクイヴァーフル同様、「女性はキャリアを持たず、家庭で育児に専念せよ」としている。

 また、近年のクイヴァーフルが多産を推奨する理由の一つは、移民が子供を産み続け、白人の人口を凌駕するであろうことだ。これは移民が増え続け、やがて白人の地位を奪うとする「グレート・リプレイスメント」(置き換え理論)と繋がっている。

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自分を神と見立て、自分の子孫を増やしたいのではないか

 世界中で"精子行脚"を行い、推定550人(実際はおそらく1000人超)の子供が存在すると言われるジョナサンは、自身のYouTube番組で「祖先を崇めよ。祖先は神である」と語っている。ジョナサンの精子によって子供を産んだ女性たちは、ジョナサンが自分を神と見立て、自分の子孫を増やしたいのではないかと考えている。

 ジョナサンは子供たちがSNSのアカウントに共通のシンボルマークを付けるよう提案した。ある母親は、ジョナサンは子供たちに直接会うことはしないが、シンボルマークによって互いの存在を知り、かつジョナサンのYouTube番組を見ることによって自分を崇めると考えているのではないかと推測した。その子供たちのほとんどは白人であり、多くはジョナサンの金髪碧眼を受け継いでいる。ある試算によると、一人の精子により500人の子供が生まれると、100年後には1万5000人の子孫が存在することになる。

写真はイメージ ©AFLO

根底には白人至上主義が?

 4人の背景や言動をまとめると、精子拡散の背後に信仰、西洋文明の崩壊を防ぐための人口維持、男尊女卑およびミソジニー、ナルシシズム(自分は優れており、そのDNAを後世に残したい願望)が複雑に絡み合っているのが見える。だが、いずれの動機も根底にあるのは白人至上主義であることも分かる。

 彼らが恐れているのは、白人人口の減少と、そこからの西洋文明の衰退だ。故に優れた自分のDNAを広く拡散したいと願う。その優れた自分は白人であり、ジョナサンはその象徴である金髪碧眼を持つ自身の相似形を無数に生み出した。ジョナサンの精子によって子供を産んだ女性たちは、お互いの子供を見て「まるで双子のようにそっくり」と驚愕した。

「俺はアフリカを漂白したい」

『1000人の子供を持つ男』で、ジョナサンを追跡した女性たちは、アフリカのケニアにあるIVFクリニックを見つけている。クリニックはヨーロッパからのドナーに航空チケットとケニア滞在費を提供していた。クリニックのドナーのリストに匿名ではあるがジョナサンと思われる男性がいたのだ。

 結局、そのドナーがジョナサンである確証は得られなかったが、同じクリニックにいた他の白人男性ドナーの告白は衝撃的だった。クリニックはその男性の精子から年間200人の赤ん坊の出産を予定しているという。そして、ドナーはこう言い放った。

「俺はアフリカを漂白したい」(I want to BLEACH Africa)。

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