メッセージアプリ・テレグラムのCEOでロシア出身の大富豪、パヴェル・ドゥルフ(41)は、精子提供によって100人以上の子供を持っていることで知られている。2025年には自分の財産を子供たちに全て公平に配分すると明らかにし、注目を集めた。多くの子供をもうけようとした人物は他にも存在し、彼らの動機にはある「共通点」も見て取れる。(全3回の3回目/はじめから読む)
“DNAを共有する子供”が増えることによる危機
テレグラムCEOのパヴェル・ドゥロフは精子提供によって「世界12カ国に100人以上」の子供をもうけた。オランダのYouTuber、ジョナサン・マイヤ―は精子の大拡散により、おそらく1000人を超える子供を作り、“シリアル精子ドナー”と呼ばれた。アメリカの不妊治療医ドナルド・クラインは患者の女性に密かに自分の精子を注入し、少なくとも94人の子供を誕生させた。
方法はどうあれ、DNAを共有する子供が世界に100人、1000人の規模で存在すると、そこには大きなリスクが生まれる。
一人の男性の精子を大量に拡散し、同じ遺伝子を持つ子供を何十人、何百人、何千人と産むと、当事者と周囲がアイデンティティについて苦しむことに加え、時には疾患を抱える。さらに向こう100年、200年にわたって社会的な危機を招いてしまう。
意図しない近親相姦のリスクも
最大のリスクは、子供たちの意図しない近親相姦だ。精子提供によって生まれた子供たちはお互いの存在を知らず、思春期以降に偶然に出会えば血縁と知らずに恋愛感情を抱くこともあり得る。
ジョナサンを取り上げたNetflixドキュメンタリー『1000人の子供を持つ男』に登場する親たちは、これを非常に心配している。狭い地方都市に100人前後のジョナサンの子がおり、偶然に同じ学校に通っていたケースもあった。ある親は、子供たちが成長して大学などで出会い、恋に落ちて結婚、出産する可能性を憂えていた。血縁者同士は、それを知らずとも似た外観などから強い親近感を抱くことがあるという。
近親者が再会すると相手に強く惹かれることも
また、きょうだいであると知らされた上で会った場合も「遺伝的性愛」(GSA: Genetic Sexual Attraction)を起こすケースがある。GSAとは離れ離れに暮らした近親者が大人になって再会すると相手に強く惹き付けられる心理的な現象を指す。性行為を含む近親相姦に至る例は少ないが、起こり得る。
GSAは、そもそもは養子縁組支援団体によって提唱された現象だ。出生直後の養子縁組によって別離した産みの親と子、もしくは兄弟姉妹が成人後に再開した際に起こる。双方がGSAを抱けば、社会的に最もタブーとされている近親相姦に繋がり、当人がすでに家庭を築いている場合は崩壊を招く。2人のうちの片方だけがGSAを抱けば、その強い感情を他方に受け入れてもらえず、大きな精神的ダメージを受けてしまう。

