『ザ・シェフ三國の究極家庭おかず』(三國清三 著)

 シェフのトレードマークである白のコックコートを脱ぎ、紺色のエプロン姿で表紙を飾る著者。北海道の寒漁村での、幼少期の貧しい暮らしぶりが綴られた巻頭エッセイ。フレンチの巨匠が紹介する、ハンバーグ、親子丼、肉じゃが、豚汁といった家庭料理のレシピの数々――。そんな意外づくしの本書がヒット中だ。

「以前、有名インフルエンサー等の本にはグラビアモデルの写真集と似た売れ方をする傾向のものもあるという話を聞いたんです。予約や刊行直後の売れ行きは好調でも、長続きはしにくいと。そこで超有名フレンチシェフの本をロングセラーにするために必要なのは、毎日使える、普通の料理のレシピだと考えました。レシピ本のメイン読者は40代、50代の女性ですが、その多くは料理好きというより、むしろ毎日のご飯作りに悩み、困っている人たち。そこで著者に『とびきりおいしい普段のおかずのレシピを』と提案しました」(担当編集者の森信千夏さん)

 さらに、食材や調味料はできるだけ普通のスーパーで買えるものを、プロが使用するような特別な調理器具は使わないでほしいとリクエストしたところ、著者に快諾されたという。

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「実際、本書の料理の撮影で使った食材や調味料の多くは、著者が近所の庶民派スーパー、ライフで購入したものなんです」(森信さん)

 どのレシピも特段難しいところはない。だが随所に著者流の技が隠されている。たとえば《豚のしょうが焼き》には酢やしょうがを塗った豚肩の薄切り肉をストロガノフ風にくるくる巻くという工程があり、こうすることでお肉が柔らかく仕上がるのだそうだ。

「掲載されている料理は、手順や材料の分量のみならず、火力や加熱時間に至るまで著者が試作を重ねに重ねて完成させたもの。ここはもう少し簡単になりませんかといった無理な要望も、真摯に検討くださいました。もう二度と家庭料理はやりたくないよと悲鳴をあげるほど(笑)。定番メニューゆえ、つい普段のやり方をしたくなる部分もあるかもしれませんが、まずはレシピに忠実に作ってみてほしい。材料はいつもと同じなのにこんなにおいしくなるんだ! という驚きや、自己流との違いなどの発見があるはずです。個人的にはポークカレーの旨さに一番感動しました」(森信さん)

2025年9月発売。初版1万5000部。現在10刷5万部(電子含む)

ザ・シェフ三國の究極家庭おかず

三國清三

主婦の友社

2025年9月5日 発売