「もう二度と家族に会えなくなるだろう」――。砂漠の町に現れた全裸の若い女性は、首に鎖をつけられていた。彼女が逃げ出してきたのは、“おもちゃ箱”と呼ばれる改造トレーラーハウス。そこで待っていたのは、快楽のために女性を支配し続けた殺人夫婦だった。世界を震撼させた、悪夢の実態とは……? 文庫『世界の殺人カップル』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/続きを読む

60人を拷問…衝撃の改造トレーラーハウスの中身とは? 写真はイメージ ©getty

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拷問から逃げた22歳女性

 1999年3月22日の午後、米ニューメキシコ州の砂漠地帯に突如現れた1人の女性に住民は呆然とした。シンシア・ヴィジル(当時22歳)を名乗るその女性が全裸で、頭から血を流し、鎖の繋がった南京錠付きの首輪を装着していたからだ。すぐに住民が警察に通報、保護された彼女が言うには、3日前に全く知らない男と女に誘拐され、「おもちゃ箱(トイボックス)」の中で拷問され続けたのだという。

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 警察は「おもちゃ箱」の意味こそ理解できなかったものの、彼女が逃げてきた経路から犯人を特定。同州トゥルース・オア・コンシクエンシーズに住むデイビッド・パーカー・レイ(同59歳)と恋人のシンディ・ヘンディ(同39歳)を逮捕する。

 その後、デイビッドの供述から「おもちゃ箱」の正体は、彼の自宅の庭に停められているトレーラーハウスと判明。警察がドアを開けると、中に異様な光景が広がっていた。鞭、鎖、浣腸器具、産婦人科で使用される股を開くための医療用の椅子など女性を暴行するために用意したと思われる器材が所狭しと並んでいたのである。

恐るべき殺人カップル

 デイビッドは1939年、ニューメキシコ州で生まれた。両親は彼が物心のつく前に離婚しており、ほどなく妹ペギーととともに父方の祖父宅に預けられる。が、時々現れる父親に会うたび虐待を受け、そのトラウマから内向的な少年として成育していく。

 端正な顔立ちから学校では女子にモテたものの一度も恋愛に発展したことはなく、逆に男子から徹底的にいじめられた。鬱屈した感情を抱えたまま10代半ばからアルコールとドラッグを覚え、同時に女性に対する暴行や拷問に興味を抱くようになる。このころ、妹が何気なくデイビッドの部屋を覗いたところ、緊縛された女性の写真やイラストが大量に収集されていたそうだ。

 高校を卒業後、アメリカ陸軍に入隊し一般整備士として働き名誉除隊を受けて以降は、トゥルース・オア・コンシクエンシーズにあるニューメキシコ公園管理局の管理員として逮捕されるまで働き、その間、4度の離婚を経験。原因は、デイビッドが相手を徹底的に服従させることに悦びを覚える危険なサディストで、妻がそれに耐えきれず逃げ出したのだ。