日本漁業を追い詰めている最大の危機は、“人が消えている”ことだ。20年で就業者は半減。高齢化と人手不足が進む一方、現場は外国人労働力と機械化に頼らざるを得なくなっている。
いま、静かに分岐点に立たされている漁業のリアルを、鹿児島大学教授の佐野雅昭氏の新刊『日本漁業の不都合な真実』(新潮社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)
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漁業者は20年で半減
日本漁業は衰退の一途を辿っています。原因は複合的ですが、忘れてはならない深刻な要因は漁業就業者数の減少です(以下、数字は概数)。
2003年に24万人いた日本の漁業就業者は、2022年には12万人と20年で半減しました。就業者には、会社員ならとうに定年退職している高齢者が含まれるので、64歳以下に限って見ても、16万人から8万人と半減。働き盛りの54歳以下でも10万人から5万人と、やはり半減しています。
資源変動の影響がない養殖業で生産量が減少しているのも、就業者減が大きな理由です。人手不足から資源も漁場も利用されずに放置されるケースも現れています。専門家にはよく知られていることですが、資源の減少より漁業者が減り続けていることが水産業にとってより深刻な問題なのです。
ただ、生産量は漁業者ほどには減少していないので、この間の一人当たり生産量は26トンから32トンに増加、同じく一人当たり生産金額は624万円から1187万円にと、倍近くに増えています。数字は水産業に関わる統計を基に計算したものですが、漁業者が減る一方で一人当たりの利用海域や資源量が増え、操業を継続する漁業者はその規模を拡大させることで、生産性と収益性を向上させていると考えられます。
漁業者の減少には生産性向上というプラス面もあるのです。生産量がある程度維持されている限りは、そこまで悲観的にならないで良さそうです。
しかしこの先、総生産量が維持できないレベルまで漁業者が減ってしまうと、消費者にとっても大問題です。自給率が低下し、魚価は軒並み上昇します。こうした状況を防ぐ手立てはあるのでしょうか。
