このため、歴史都市としての松江を根底から否定するようなマンションの建設計画が提出されながら、市は「景観計画を満たしている」と判断。さらには市の景観審議会までもが2023年10月、市の判断を前提に、「景観基準を満たす」と答申してしまった。2024年3月下旬には着工され、すでに19階まで工事が進んでいる。
遅すぎた景観基準の見直し
建設計画が了承されたのち、市民団体が「城下町の景観が損なわれる」と指摘し、はじめて問題が浮上した。驚くべきことに、それまで松江市も、市の景観審議委員も、高層マンションの建設が景観破壊につながるという認識を、まったくいだいていなかったようなのだ。
マンション建設を許してしまったことを受け、松江市は2025年1月、一定の高さを超えるビルなどを建てる事業者が対象の事前協議制度を導入した。7月には松江城天守からの眺望基準を見直している。また、市の景観審議委員会も、市街地から天守を眺める「視点場」を市内の9カ所に設置するという案を了承。城の周辺エリアに関して、建物の高さだけでなく色彩なども規制することを検討中で、視点場と合わせて今後の景観計画に盛り込まれる予定だという。
こうした見直し自体は評価できる。だが、京阪電鉄不動産とタカラレーベンによるこのマンションに関しては、景観計画が改訂される前に了承されたため、もはやどうすることもできない。上定昭仁市長が親会社である京阪ホールディングスに、高さを引き下げてほしいと直談判したが、採算を理由に断られている。
また、建設反対を訴える市民団体「まつえ/風景会議」のメンバーら住民41人は、松江地裁に対して2025年9月、景観利益の保全を理由に15階を超える部分の建設中止を求める仮処分を申し立てたが、11月27日に却下されてしまった。
もはや世界遺産登録は赤信号
住民側は今後、16階以上の解体および撤去を求めるとともに、松江市の景観対応のまずさを問うて、松江地裁に提訴する計画だというが、どうなるだろうか。