近年は政治の世界でも、「見た目」が勝負を分けることがずいぶんと意識されるようになった。色や服装、身振りや表情などの「非言語メッセージ」は時に主張や政策の内容以上に有権者の印象を左右する力を持っている。

 そして今回の衆議院選挙へ向けて最も戦略的に服装を選んでいるように見えるのが高市早苗総理だ。

 筆者が高市早苗を注視するようになったのは、2021年の自民党総裁選に初めて挑戦した頃からだ。

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高市早苗氏 ©時事通信社

 当時は、主張の強さと呼応するようなややきつめのアイメイクが印象的で、国民が親近感を抱く佇まいとは言い難い印象だった。

 また高市氏は、襟元にパイピングを施したものや、上襟が立体的に立ち上がるデザインなど、襟元に明確な特徴を持つジャケットを選ぶ傾向が見られた。さらに襟元にスタッズなどの装飾を施した目立つデザインもあり、視線が胸元に集中することが多かった。

 その結果、政策の内容よりもデザインの主張の強さや派手さの印象が先立つ場面があった。

メイクが変化する前の高市早苗氏。襟元も特徴的 ©文藝春秋

 これらの“旧高市ファッション”には、明らかに「関西で受けるファッション」という特徴がある。

 関西では、「一捻りあるもの」「少し効かせたデザイン」が感性の表れとして評価され、派手な色使いや意匠が受けいれられやすい土壌がある。その中では、高市氏のクセの強さは“分かり合える”という親近感をもたらす効果があった。

 しかし奈良の選挙区で支持されてきたスタイルと、日本全国で受け入れられるスタイルでは求められる基準がまったく異なる。このズレは見過ごせない。

 2024年の総裁選では一転して、全国区を意識したのか、ダークトーンのスーツが目立った。

 しかし今度は、慎重さが前面に出る一方で、総理大臣に求められる迫力や存在感がやや弱く映った印象も否めない。ロイヤルブルーのジャケットも登場したが、インナーが黒。黒は吸収色で、情報や光をも吸い込むので、視線をも吸収してしまう。

 この時期は、総じて見れば、非言語コミュニケーションの設計という点において、なお改善の余地が残されていた段階だったと言えるだろう。

シャープな輪郭を和らげるパールの「レフ板効果」

 高市氏の外見が大きく変化したのは、2025年の総裁選だった。髪型はそれまでと同じショートカットだったが顔立ちが際立つようタイトに整え、スーツはジャケット、スカート、インナーまで鮮やかなロイヤルブルーで統一。総裁選で選んだロイヤルブルーは、彼女が敬愛するサッチャー元英首相を想起させ、安全保障や外交面での手腕への信頼感を高めることも狙いの1つだっただろう。

 首元に合わせたパールのネックレスは装飾であると同時に、「日本人の美意識と信頼」をアピールするものだろう。

 パールのネックレスの丸みは、高市氏のシャープな輪郭の印象をやわらげると同時に、光を丸く反射するレフ板のような機能もあり、顔が明るく見える効果がある。