警察が“最凶”と恐れるトクリュウ型犯罪集団「ナチュラル」。2000人ものスカウトたちが路上やSNSで女性を狙い、次々と風俗店へ送り込む。独自の「闇アプリ」で支配された組織は、年間数十億を稼ぎ出し、裏切り者には凄惨なリンチを加えるという。暴力団や警察官までも飲み込む、この地獄のような組織の実態とは――。

 ここでは、組織の実態に迫ったルポルタージュ『捕食 欲望をカネに変えるトクリュウ型犯罪集団「ナチュラル」の闇』(著=清水將裕・日本橋グループ*、講談社)より一部を抜粋。偏差値が高く誰もが知る有名大学に通っていた「ナチュラル」の現役メンバー・佐伯(偽名)が語った組織の内情を紹介する。(1回目から読む)

写真はイメージ ©maruco/イメージマート

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「ナンパ経験すらもほとんどなかった」最初は歌舞伎町で路上スカウト

 佐伯は、はじめてスカウトという仕事で収入を得たときのことを、いまでも鮮明に覚えていた。すでにSNSが普及していたとはいえ、スカウトの基本動作である「繁華街に立って通りがかりの女性に声をかける」ことから始めたという。これは、一種の通過儀礼のような意味合いもあり、昔から大きく変わっていない。

「最初はやっぱり繁華街に出て声かけをやらされるんですよね。正直なところ嫌でしたけど、仕方なくですね。とりあえず、自分の班の上司というか指導役みたいな人に教わって、だいたいのやり方を頭に入れていたんですけど、そもそも路上で他人に声をかけるシチュエーションなんて普段ないので、自分はけっこうビビっていましたね。基本的に、自分は声も大きくないですし、人前でワイワイするのも苦手なほうでしたから」

 場所は日本最大の歓楽街、新宿・歌舞伎町。

 ナンパ経験すらもほとんどなかった佐伯は、勝手が分からず、周りの視線を避けるように、ただ何となく声をかけていただけだった。いま思い出すと、声もはっきり出ていたかどうか、疑わしいという。

「お姉さん、お姉さん。いまちょっとお時間ありますか?」

「学生さんですか? 簡単なアルバイトのお話、よかったらいかがですか」

 そんな言葉をためらいがちに口にしながら、若い女性に声をかけていく。ほとんどの人は無視するか、露骨に嫌な顔をして、「興味ないんで」ときつく言って去っていった。