ボトムからスタートすると、高い解像度で観察できる

 僕なんてね、子どもの頃から挫折だらけでしたよ。小学校の頃、将来何になりたかったかというと「リレーの選手」。職業ですらないんだけど、めちゃくちゃ足が遅かったし体育の種目もからっきしダメで、強いコンプレックスになっていたんです。

 高校受験も第一志望は落ちて、滑り止め校に補欠合格。当時、入学金を先払いした人は合格確約というキャンペーンがあって、そのおかげかなという有り様です。

田中 僕も中学受験で失敗して、滑り止めの男子校に行きましたよ。だから、僕は下っ端から這い上がっていったという自認があって、ゴールドマン・サックスは東大やハーバード卒のエリートばかりでしたから、圧倒的なビリ。

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 ただ一つだけ自分にあるものがあるとすれば、「人がわからないことが何かはわかる」。人がつまずくところで全部つまずいてきたから。受験の失敗なども踏まえて自分のわからない部分はよく把握していたから、できる人を徹底的に観察し、真似るように努めてきました。

 ボトムからスタートしていくと、高い解像度で観察して、自分をどんどんアップデートできるんですよね。余談ですが、運動神経の悪い僕でもスキーはすごく好きで、正指導員の資格をもっています。上達するのにすごく時間がかかって、早い人なら4、5年でとれるところ、一番上の資格をとるまでに13年以上かかりました。

 でもだからこそ、ネイティブでうまかった指導員が初心者に「なんで転ぶの!」と言ってしまうような場面で、僕は「これなら怖くないから、まずこれだけやってみて」と初心者のつまずきに寄り添えます。不得手な初心者や中級者がどこに引っかかってしまうかがわかると、ビジネスに置き換えてもマーケットとして非常に大きいんですね。わかっている上級者だけ狙うよりも。

 だから、失敗や挫折の体験は必ず糧になるし、Giverのマインドに転換できるということを強調したいですね。

The Giver 人を動かす方程式

澤円

文藝春秋

2026年1月15日 発売

次の記事に続く 「こういう工夫ができて良かったね」「これ教えてよ」……元外資系マネージャーが勧める“一流のメンバーを動かす”魔法の言葉