元・日本マイクロソフト業務執行役員で「プレゼンの神様」の異名をとる澤円氏が、最新刊『The Giver  人を動かす方程式』を上梓した。人の心を動かす伝え方で、何よりも大切なのは「ストーリー力」だという。単なるテクニックではない、Giver(=与える人)のプレゼン術とは?

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澤円氏 撮影・杉山拓也(文藝春秋)

「でかい主語、曖昧なロジック、雑な提案」にご用心

――ずばり「人の心を動かすプレゼン」には何が重要なのでしょうか?

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 まず前提として、昨今マーケティングにおいて、「セグメンテーションからペルソナへ」という大きなシフトチェンジが進んでいることを理解しておく必要があります。

 セグメンテーションというのは、「くくる」という意味で、例えば「50代男性」とか「Z世代の若者」という大きなくくりでターゲットを設定し、十把一絡げに「このシャツがぴったりですよ」と提案するようなやり方です。

 従来からよく行われている手法で、いわばテンプレ化されたくくりで、マスを動かそうとするアプローチですね。でもみなさんも実感があると思いますが、なにかプレゼンされるにせよ商品を売られるにせよ、そんな雑なくくりで「あなたこれ好きでしょ」と提示されたってあまり心が動かないですよね? 僕自身でいうと「50代男性にお似合いの服」と提案されてピンときたためしがありません。

――雑にカテゴライズされると、イラッとすることさえあります(笑)。

 そうでしょう。雑にくくるとろくなことはなくて、「でかい主語、曖昧なロジック、雑な提案」は炎上必至ですよ、と僕はよくお伝えしています。とくに「女性は数字に弱い」みたいな決めつけなど論外です。

 これに対し、「人格、仮面」を意味するペルソナとは、伝えたい相手(顧客)を克明に想像することです。年齢や性別、職業などの属性、さらには価値観やライフスタイルまでを含めてイメージし、その人にとっての一次体験を描き出すのです。

 たとえば「その人は朝どんな椅子に座り、どんな気持ちでコーヒーを飲んでいるのか」というディテールがあってはじめて、相手に“自分ごと化”してもらえるストーリーとなります。

――なるほど。まずはどのペルソナに伝えるかをしっかりイメージしないと話に説得力が生まれないわけですね。

澤円流「ストーリーの黄金則」とは?

 そうです。僕の考える「ストーリーの黄金則」は、(1)抽象化→(2)共通化→(3)課題解決の3ステップを踏みますが、ペルソナの設定はとくに(2)と深く関係しています。

 順をおってご説明しましょう。まず(1)抽象化は「テーマの本質を伝える」ステップ、(2)共通化は「聞き手の共感を深めて自分ごとにしてもらう」ステップ、(3)課題解決は「望ましい未来の姿」を提示するステップです。

『The Giver 人を動かす方程式』より