――具体的にはどういうプロセスでしょう。

 たとえば、無駄な会議が多く、生産性が低くて多くの社員から不満の声が上がっているという現状から話をスタートするとします。現実は複雑な事象が絡まり合っているものですが、その本質をとらえて「抽象化」するのです。

 ここで「本質ってなんですか?」とよく学生さんに訊かれるんですが、端的にいうと、素数や原子のような、つまり「それ以上分解できない」要素に〈共通するもの〉が本質です。

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 無駄な会議なら、たとえばその中身を、「目的もゴールもなく、議論があちこちに飛ぶ」「いつも意思決定せずに各部署に持ち帰る」「上司対策の“情報共有”アリバイづくり」……といった小さな単位に一度“要素分解”してみます。すると「目的のない会議は、羅針盤のない航海のようなもの」と本質を浮き彫りにできたりします。

©AFLO

――面白いですね。ごちゃごちゃした現実を端的に「抽象化」されると、一気に話に引き込まれます。

わらべ歌のなかに隠された「抽象化」のヒント

 実はこれ、「さよなら三角また来て四角」というわらべ歌にも通じるんですよ。「四角は豆腐 豆腐は白い 白いはウサギ ウサギは跳ねる……」と続いていく各地に伝わる童謡ですが、四角も白いもそれ以上分解できない要素から連想して繋いでいるんですね。

 本書ではこの歌を「たとえ話」のメソッドの一環として紹介していますが、要素分解した共通項から本質をつかむのに、ひとつヒントになる歌です。

――わらべ歌のなかにそんなヒントが隠されていたとは!

 そして(2)の共通化のステップで、具体的なペルソナをイメージして伝えることで、聞き手は「これは私のことだ」と自分ごととして受け止めることができます。特定のペルソナをイメージするとき、ぼんやりとしか浮かばない部分がきっとあるはずなので、現場にいって「一次情報」を得ることをおすすめします。

 詳しくは本書をご覧いただければと思いますが、リアルな体験を踏まえてこそ、「あなたの世界に私も共感していますよ」という共通認識をつくり出すことができるんです。

澤円氏

――最後が(3)の課題解決ですね。

 本質を提示し、共通認識をつくったら、あとはもう「こうやったらみんなが幸せになりますよ」という課題解決として「望ましい未来」を提示するだけです。相手の視点に立って「as is」(現状)から「to be」(ありたい姿)を伝える。この望ましい未来への変化こそが、「人の心が動く」ストーリーの本質です。