新著『The Giver 人を動かす方程式』が話題の元マイクロソフト・澤円氏と、元ゴールドマン・サックスの世界的な投資家・田中渓氏との初対談が実現。ワールドワイドな職場環境のなかで二人が見てきた“成功に不可欠な”Giver(=与える人)の考え方と“自らの挫折体験”とは?

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澤円氏(左)と田中渓氏(右) 撮影・細田忠(文藝春秋)

見返りを求めずgiveにフォーカスする

 田中さんとは以前、たまたま別のイベントでご挨拶する機会があって意気投合したんですね。もう勝手にマブダチだと思ってますが(笑)、今日は僕の新著の刊行記念イベントにゲストとしてお迎えしました。

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 田中さんのご著書『億までの人 億からの人』も大変面白く拝読していますが、人間関係のつくり方について、忙しい相手のリソースと時間をいただく上で、相手に「giveできることは何か?」をよくよく考えて臨んでいることが書かれていました。まさにそうだよなと、僕の考えてきたことと共鳴するものを感じました。

田中 「Taker(=奪う人)ではなくGiverであれ」というのは、ゴールドマン・サックス時代から実践してきて良かったと感じてきたことで、このテーマでまる一冊しっかり深めて書いている本はなかなかありません。僕がわずかに触れたことを『The Giver』では見事に多角的に言語化されていて、非常に気持ちのいい本でした。

澤 ありがとうございます。「Giver」の概念はとても面白くて、組織心理学者アダム・グラントの定義によると、「自分が得するために」与える行為だとMatcher(=損得のバランスをとる人)だし、「これだけやったのにリターンが少なくて損した」と感じるなら完全にTakerの思考です。僕は、見返りを求めずにgiveという「行動そのもの」にフォーカスすることが重要だと思っています。

生き残る確率が高くない人とは?

田中 同感です。仕事柄、いわゆる成功者――富裕層と言われる人々や社会的に高い名誉のある方々を数多く見てきましたが、僕が尊敬できる人たちをつぶさに観察すると、ほぼ例外なくGiverです。彼らに共通する最大公約数の資質を見ていったとき、早起きや返信の速さや決断力のすごさ、といった要素のなかに、「なんの見返りも期待せず、進んで与える」Giverの精神が確かにあるんですね。

 結局、ものすごい金持ちだったとしても、Taker気質の人って最後まで生き残るのが確率的にあまり高くない気がします。

澤円氏(左)

田中 そうなんです。もちろん、中には嫌なやつでも成功している人はいますよ。イーロン・マスクみたいにアメリカで一番の人ならTakerだろうがオラオラ系だろうが「憎まれっ子世にはばかる」わけですが(笑)、普通は、いい人で与えていたほうがめぐりめぐって自分も幸せになるし、成功しやすいですよね。