その人にとって「会社とはどういう場所か?」
田中 一流の天才トレーダーたちがいる中で、「あんな奴がマネージャーじゃダメだよな」と舐められたらいけないし、片やくすぶっている人もいたから、全部いっしょくたに引き受けるのは最初苦労しましたね。
そこでまずやったのは、各メンバーの人生にとって、会社とはどういう場所なのかを理解していくことでした。お金を手にしたい人、会社への忠誠心の強い人、社会をよくしたい人、人生の好奇心を満たしたい人……それぞれが思いを叶えたくて会社という場にいるわけです。それをわかったうえで、その人にとって一番フィット感のある仕事の仕方を話し合ったり、人生にとって何が一番いいのかを一緒に考えていったりしたら、結果的にそれが組織のパフォーマンスの最大化につながりました。
澤 マネージメントで大切なのは、決めつけをせずに、まず観察し、解像度を高めていってコミュニケーションのサイクルを回し続けることです。よく多くの人はマネージメントで困ると、「やり方」を考えます。でもそこで方法論に走るのは、実は本質的に課題解決しないといけない事象から目がそれている状態なんですよね。やり方を探すのではなく、田中さんが実践されたように「その人はいま何を課題と思っているのか」「どうしたいと思っているのか」、内的な欲求をよく観察する必要がある。
これを僕は「デッサン思考」と呼んでいるのですが、デッサンでは造形を的確に把握して光のあたり方と影の出方を見なければ、自然な描写になりません。「見るのが8割、描くのが2割」とも言われますが、マネージメントの本質に通じる話だと思います。メンバーをよく見て、彼らを通してその裏側に広がっている世界を見る――これに尽きると思います。
3ヶ月間の“徹夜続きの作業”が無駄になり…
田中 同感です。あと僕の場合、本当に真逆のタイプの上司の下についたことが学びとして大きかった。最初の上司は、超マイクロマネジメント型で、それこそ部下の箸の上げ下げまで管理するようなタイプでしたが、アメリカ人の上司とは全くコミュニケーションをとらない人だったんですね。僕に3ヶ月間徹夜続きでまとめさせた300ページもの資料をもって、いざアメリカの上司に2時間のプレゼンをする段階で、「ヘイヘイヘイ!」と最初の45秒で止められた。「I don't like this type of business」と一蹴されて終了。膨大な手間をかけたプレゼン資料はめくられることすらなく終わった、という悲しいことがありましたね。
一方、次の上司は基本的にはチームメンバーに任せる権限移譲型。「お前はどうしたいんだ」「なにを目指しているんだ」と要所要所で確認されるのですが、仕事の内容には一切なにも言わない。怖いくらい検証はされますが、責任は全部とってくれる。その方はアメリカ人の上司と密に電話をしていて、僕らが無駄な作業をしなくていいようにしつつ、やりたいことができる環境を整えてくれていました。
対照的な二人の上司についたことで、長期的な目でみて自分がマネージャーをやるならどうしたらいいのだろうと、すごく考えましたね。

