少しでも良い環境を求めて横行する暴力や裏工作

 こうした劣悪な環境から、自然と軍紀は緩み、殴打など軍隊内の暴力行為が頻発する悪循環に陥っている。誰もが少しでも良い環境の部隊への配属を求め、「事業」と呼ばれる賄賂と人脈を使った裏工作を行う。上官たちは強い立場を利用して私腹を肥やすほか、男性将校による女性兵士への性暴力が多発している。妊娠や堕胎などで問題が発覚するという。

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 そんななか、兵士たちへの最大の恩恵が、朝鮮労働党への入党だった。党員になれば、除隊後に待遇の良い職場に配属される可能性が高まるからだ。だが、李は「最近では入党条件が厳しくなり、不満が増えている。入党するために、賄賂や性上納も発生している」と語る。李は「北朝鮮軍は128万人もいる。国の規模からすれば、米軍の約130万人と比べても異常に多い数字だ。非合理的で無理な部隊運営が、こうした深刻な人権侵害を生んでいる」と説明する。同時に「北朝鮮軍は北朝鮮体制の核心だ。北朝鮮軍の人権問題を提起すれば、北朝鮮は体制への脅威だと受け止める可能性が高い」とする。

 軍人たちが苦しんでいるのは、核開発の代償として国際社会による制裁が科せられ、経済発展が停滞したという事情にもよる。国際社会から孤立し、経済が発展しないため、軍人たちを「ただの労働力」として安易に利用した結果とも言える。

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