通常は、厚労省の専門家会議(医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議)で医学的な妥当性を議論し、その結果をもとにパブコメを募集するのですが、今回はなぜかこの専門家会議を通す前に、厚労省がタミフルをリストアップし、いきなり市民の意見を募集したのです。

本稿で述べてきたように、医療現場でインフルエンザ診療を「ふつうに」おこなってきた医療関係者であれば、「タミフル市販化」など論外。専門家会議など絶対に通るはずがない話です。

そこをすっとばして市民にまず意見を公募することで、「それは便利、ぜひ進めてほしい」という声が多ければ、それを既成事実として専門家に突きつけることができると考えたのかもしれません。

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さていよいよ衆院選の投開票日も間近ですが、自民党、日本維新の会という“医療費削減推進政権”が多数を占め、その政策に異論のない国民民主党も躍進ということになれば、「タミフル市販化」は本当に実現することになるかもしれません。

争点はさまざまあれど、セルフメディケーションというおしゃれな言葉の裏にある「医療の自己責任化」の副作用は、すべての個人にはもちろん、この国の社会全体におよぶものであることを、この「タミフル市販化」の話題を見たときに、ちょっと思い出していただければ幸いです。

木村 知(きむら・とも)
医師
1968年生まれ。医師。東京科学大学医学部臨床教授。在宅医療を中心に、多くの患者の診療、看取りをおこないつつ、医学部生・研修医の臨床教育指導にも従事、後進の育成も手掛けている。医療者ならではの視点で、時事問題、政治問題についても積極的に発信。新聞・週刊誌にも多数のコメントを提供している。著書に『大往生の作法 在宅医だからわかった人生最終コーナーの歩き方』『病気は社会が引き起こす インフルエンザ大流行のワケ』(いずれも角川新書)など。
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