▼〈ジャーナリストの目 サッカーやラグビーでは成功している「移民」政策だが政権は本質を理解しているか〉週刊現代7月21日・28日合併号(筆者=森功)
W杯ロシア大会で、私もサッカー日本代表の戦いに釘付けになった。妙な感慨が湧いたのは、メンバー表に並ぶ名前を見たときだ。かつては当て字の選手が必ず1人はいた。日本サッカーを牽引したラモス瑠偉や三都主アレサンドロ、田中マルクス闘莉王らブラジル出身の帰化選手である。
日本人だけで強豪国とわたり合えるほど、競技レベルが上がったのか。同時に以前から抱いていた違和感が頭をもたげた。外国出身選手を競技だけでなく、広く社会全体のなかに置き換えてみる必要があるのではないか、と。
そんなときに膝を打ったのが『週刊現代』の〈ジャーナリストの目〉である。ノンフィクション作家・森功さんの〈サッカーやラグビーでは成功している「移民」政策だが政権は本質を理解しているか〉と題された記事だ。
ベルギーが3位に躍進した一因は、政府の移民政策にあるらしい。エースストライカーとして活躍したロメル・ルカクのルーツはコンゴ民主共和国。しかし欧州各国の移民政策は、安価な労働力を手に入れた反面、人種差別や貧困などを生み出し、さらに排他主義的な極右勢力が台頭するきっかけとなる。そう指摘した森さんは〈翻って日本はどうか〉と問う。
〈「移民政策はとらない」とわが首相は第2次政権の発足以来、そう言い張ってきた。だが、その実、少子高齢化による労働力不足を前に、外国人の労働力に期待しているのは明らかである〉
農業や建築、介護などの現場で期待されるのが、技能実習制度で来日した外国人だ。昨年、実習期間が3年から5年に延長された。外国人をただの労働力としか見ていない、なし崩し的な移民政策である。外国人をどのように受け入れるか。人口が減少していくなか、もっと踏み込んで考えていく必要がある。森さんは〈そこにはきれいごとでは済まされない企業の論理が働き、新たな格差や差別を生む〉と危惧する。路上のヘイトスピーチやネット上の排他的で不寛容な書き込みが、新たな格差や差別の胎動のように感じるのは私だけではないだろう。
では、日本で成功している「移民政策」とは何か。それが、ラグビー日本代表なのではないかとかねてから考えていた。