下馬評を覆しての勝利に、日本中が沸いた。

 ロシアW杯グループリーグ第1戦、格上と言われたコロンビアを相手に、日本は2-1での勝利をもぎ取った。

特筆すべき時速32.18kmというトップスピード

 得点を挙げた大迫勇也(ブレーメン)や香川真司(ドルトムント)らの活躍に注目が集まる一方で、翌日のスタッツを見てひとつ驚きの数字を見せた選手がいた。

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 それが、原口元気(ハノーファー)だ。

1991年生まれの27歳、原口元気選手 ©JMPA

 アシストもゴールもない。放ったシュート数もゼロ。それでも、スプリント(時速24.48km以上の走り)回数ではチームトップの56と突出した数字をマークした。

 総走行距離でも長友佑都(ガラタサライ)に次ぐ2位の10.158kmを記録。特筆すべきはトップスピードの時速32.18kmという数字で、世界でもトップクラスのスピードを持つといわれるコロンビアのギジェルモ・クアドラード(ユベントス)をも上回って見せた。

トップスピードは脅威の時速32.18km ©JMPA

 そんな原口が見せた献身的なスプリント能力の裏には、彼が師事しているあるコーチがいる。それがシドニー・アテネ五輪の110mハードル走の代表選手で、現在は筑波大学で准教授を務める谷川聡氏だ。

「僕が『(脚を)速くしてくれ』って言っても、なかなかトレーニングをやってくれなかったのが衝撃的で(笑)。まずは2年半、下積みというか、地道に能力を上げるようなトレーニングをやらされました。すぐに足を速くしたかったんですけど『ケガをするリスクがあるから』ということで、長期的に考えてやってくれた。そこは、他のトレーナーさんとは違うところだったのかなと思います」

 そう原口本人が語るように、4年前からはじまった2人のタッグは、如実に原口のプレーへ好影響を与えた。もともと才能型の“閃き”を武器にした選手だった原口は、驚異的なスプリント能力を持つ汗かき型の選手へと変貌を遂げたのである。