これまでもドキュメンタリー部門や短編部門では、投票の際に作品の鑑賞を義務づけていましたが、全作品に対する鑑賞義務はこれまでありませんでした。投票する側の責任が大きくなるだけに、2026年に開催される第98回授賞式は、そういった視点で見てみることも一興だと思います。
主演と助演の境界線
第一章では主要5部門を制することが困難であることも解説しましたが、4部門ある俳優賞をひとつの作品で複数受賞した例が少ないながらいくつかあります。
例えば、ヴィヴィアン・リー(主演女優賞)、カール・マルデン(助演男優賞)、キム・ハンター(助演女優賞)の3名が受賞した『欲望という名の電車』(1951)と、ピーター・フィンチ(主演男優賞)、フェイ・ダナウェイ(主演女優賞)、ベアトリス・ストレイト(助演女優賞)の3名が受賞した『ネットワーク』(1976)。そして、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(2022)は、ミシェル・ヨー(主演女優賞)、キー・ホイ・クァン(助演男優賞)、ジェイミー・リー・カーティス(助演女優賞)の3名が俳優部門を受賞した作品で、なおかつ作品賞を受賞した初めての作品でした。
今のところ、4つの俳優部門を制した作品は存在しません(2025年現在)。
ここで問題となるのが、主演と助演の境界線はどこにあるのかという点です。出演俳優のうち、誰が主演で、誰が助演にあたるのか? という点に関しては規定がありません。基本的には作品を製作した映画会社の申請によるものなのです。そのため、『ネットワーク』のように、ピーター・フィンチとウィリアム・ホールデンのふたりが、主演男優賞の候補になるようなケースも生まれます。こういった場合は票が割れて、ふたりとも受賞を逃すことが多く、第64回の『テルマ&ルイーズ』(1991)では、主演女優賞にスーザン・サランドンとジーナ・デイヴィスが同時にノミネートされたものの無冠に終わったという例がありました。