2025年公開の話題作、映画『国宝』(李相日監督)。吉沢亮、横浜流星という日本のトップ俳優が歌舞伎界の熱狂を演じた同作が、アカデミー賞で台風の目になるかもしれない。

 映画評論家・松崎健夫氏によると、『国宝』がメイクアップ&ヘアスタイリング賞に選出される意外な勝機があるのだとか。ハリウッドのプロは『国宝』のどんなところを評価しているのか。松崎氏による『アカデミー賞入門』(角川新書)の一部を抜粋、加筆して紹介する。

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技術賞に注目

 撮影賞、編集賞、美術賞、衣装デザイン賞、メイク・へアスタイリング賞、作曲賞、歌曲賞、技術部門の各賞のノミネートを決める際には、自身が所属する映画芸術科学アカデミーの支部が選んだ部門にのみ投票できます。

 それは、アカデミー賞における各専門の部門が、実際に映画産業で働く側の、いわゆる“プロの視点”によって、その年に優秀だった同業者の仕事(作品)を、ノミネート5作品まで絞り込んでいるということ。

 例えば、私たちが美しい映像で表現された映画を観れば、それが「撮影監督」の仕事によるものだということはわかります。しかし、どこがどのようにすばらしいか説明するのは難しいもの。技術賞は専門性の高い分野だからです。投票権を持っている技術者たちはその道の専門家。どういった手法を用いて“映像美”を導き出したのかを、技術的な視点で評価できるという点が重要です。ここでは、映画製作に関わるプロの技術者たちが、“映画技術の向上”という視点で選んできた技術部門の賞について解説します。

『国宝』のノミネート

 2026年3月16日(日本時間)に開催される第98回アカデミー賞では、日本の『国宝』(2025)がメイクアップ&ヘアスタイリング賞にノミネートされました。

画像は『国宝』公式サイトより

 最終候補となったのは、ドウェイン・ジョンソンを伝説の総合格闘家マーク・ケアーに特殊メイクで変身させた『スマッシング・マシーン』(2025)、ダンスホールでの惨劇で異形の敵を特殊メイクで表現したホラー映画『罪人たち』(2025)、誰もが知る怪物の形相を新たな解釈で表現したホラー映画『フランケンシュタイン』(2025)、「シンデレラ」に登場する意地悪な義姉妹の方を主人公に、整形のプロセスを特殊メイクで表現したホラー映画『アグリーシスター 可愛いあの娘は醜いわたし』(2025)、そして『国宝』を加えた5作品。

 作品における特殊メイクの重要性・貢献度が高い映画がノミネートされている中で、歌舞伎におけるメイクやヘアスタイリングが評価されている『国宝』は異色な存在です。