世界最高峰の映画の祭典、アカデミー賞。しかしその歴史は、「なぜこの映画が?」という疑惑と落胆の歴史でもある。
世界興行記録を塗り替えた『E.T.』が『ガンジー』に敗れ、映画史を変えた『スター・ウォーズ』が『アニー・ホール』に敗れる――。そこには、同業者によるスピルバーグへの“嫉妬”や、会員たちが「映画を観ないで投票していた」疑惑、そして平均点が高いだけの作品が勝ってしまう奇妙な集計システムの存在があった。
2026年からは「新ルール」が施行されるが、これまでのアカデミー賞にはどのような“欠陥”と“舞台裏”があったのか。映画評論家・松崎健夫氏による『アカデミー賞入門』(角川新書)の一部を抜粋して紹介する。
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投票システムの難点
アカデミー賞のノミネーションに対する規定は細かく変更されてきました。
それは、各部門で何らかの問題点が見つかった時に、“公平さ”を基準にしながら時代に合わせた改善を、映画芸術科学アカデミーが行ってきたからです。そういった変更の中で、2026年に開催される第98回から施行される新たなルール「映画芸術科学アカデミーの会員は、投票する前にさまざまな部門にノミネートされた作品を全て観ること」という規定に対して戸惑いの声が上がっています。
候補となった作品を観てから投票することは当然のことのように思えるのですが、わざわざ規定を設けたことによって「これまでは観もせずに投票できていたのか?」という疑念が湧き上がっています。ここからは、アカデミー賞の受賞結果に対して「なぜ、この映画が?」という声が上がった具体例を挙げながら、選考基準の謎について解説したいと思います。
